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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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「シゾンタニアは危機に瀕しています。なにとぞ救援を!騎士団長!」

大戦から10年後の記念式典。
名目上、ナイレンの代理として派遣されたフレンはアレクセイの前に跪いていた。
フレンは現在のシゾンタニアの状況を報告し、援軍を送ってくれるようアレクセイに懇願した。
しかし、与えられた答えは冷たいものだった。

「式典が終われば援軍を送る。それまで待て」

頭を伏せたままのフレンの顔がゆがみ、拳が固く握られる。
街の人々が襲われるかもしれない危機よりも、式典のほうがそれほどに重要なのか。
さらに口を開こうとしたフレンをアレクセイはきつく睨み据えた。

「くどい。ナイレンへは援軍が到着するまで勝手に動くなと伝えろ。貴様ごとき新米の兵は式典に参加せずともよい。その伝言をもってシゾンタニアへ戻れ」

取りつく島もないほどにばっさりと切って捨てられる。
耐えがたいほどの屈辱。
それをフレンはぐっと唇をかみしめて耐えた。
ここで自分が追いすがったとて、騎士団長の決定は覆らない。
それならば、この決定を隊長へ伝えて判断を仰ぐべきだ。

立ち上がろうとしたフレンに、アレクセイの側近の男から声がかかる。

「シーフォ…君はあのファイナス・シーフォの息子か?」

男の口から出た父の名前に、フレンは思わず顔を上げる。
男はフレンの驚いた表情を見て満足したのか、にやにやと厭らしい笑いを浮かべて言葉をつづけた。

「君の父親は残念だったねぇ…上の命令を無視した揚句命を落とした。おとなしく従っていればよかったものを…まったく、無駄死にだ」

男の言葉に、頭が真っ白になる。
表情をなくしたフレンをよそに、男の言葉は続く。

「君はさっさとフェドロッ隊長に騎士団長の命を伝えてくれたまえ。くれぐれも、命令違反などして犬死しないように…とな……ひっ」

男の言葉が終るか終らないか…というとき。轟音が響いた。
見ると、隊長服を着た男が扉を蹴ったようだった。
扉は激しい衝撃を受けたのが見てわかるほど歪んでしまっている。

フレンはその人物を知っていた。
話したことはないが、とても有名な人物であったから。

「ろ、ローウェル隊長……」

震える声で男がその名を呼ぶ。
ユーリはけだるそうに頭をかきながら男との距離を詰める。

「おい、ひとンとこの新人に教授してやる暇があるんなら、とっとと騎士団長様のとこに行ったらどうだ?」
「は、そ、そうですね。失礼します」

ユーリにすごまれた男は逃げるように走って出ていく。
その様子を呆然と見送ってから、フレンは突然この場に現れた隊長を見上げた。

助けて…くれた?けど、どうして…?

わけがわからずただ見上げるだけのフレンの腕をユーリは何も言わずに引き、立ち上がらせるとドンと背中を押した。

「ナイレンによろしく言っといてくれ」

ひらひらと手を振ってユーリは一人さっさと帰っていく。
フレンに告げられたのはただそれだけ。
自分を助けた理由も、何を隊長によろしく伝えるのかも、何もわからぬまま。

……考えてても仕方ない

フレンは気持ちを切り替えるために2,3度頭を振ると早足で歩き始めた。
一刻も早くシゾンタニアへ戻るために。






ユーリは自分の執務室へ戻ると、黙々と仕事を片づけていた。
デスクワークが苦手な彼にしては、空から槍が降るくらいに珍しいこと。
ユーリは最後の一枚らしい書類にサインを書き終えると、大きく伸びをした。
そこへ、荒々しく扉を開いて入ってくるもの。

「ユーリ!」
「よぅ、アシェット」

ローウェル隊の隊服を着た騎士…ユーリの副官であるアシェットはユーリに詰め寄ると、ダン、と机に両手を打ち付けた。

「なんで俺が式典なんかに参加しなくちゃならないんだ!」
「お。なんかなんて言っていいのか?騎士団長様に怒られるぜ」
「お前が言うか!」

はっはっは、と笑うユーリにアシェットは一枚の紙を突き付ける。

「その騎士団長様から、お前に、伝言だよ!必ず式典には参加しろとさ!」
「だから、辞表出しただろ?」
「そんなもの、俺が認められるか!」

いつもは隊長であるユーリに対して、同期ではあれど敬語を使う彼ではあるが、すっかりそれを忘れて怒鳴る。
ユーリはそれを面白そうに見て、じゃぁ、と言葉を区切る。

「病欠ってことで」
「馬鹿かお前は!」

アシェットの怒鳴り声などなんのその。
ユーリは騎士服を脱ぎ捨て、ラフな私服に着替えると愛刀を肩に担いで笑った。

「じゃ、後よろしくな」

振り返りもせずに窓から出かけていくユーリを見送り、アシェットはがっくりとうなだれた。
ユーリの行き先が分かるからこそ、強く引き止められなかった自分が恨めしい。
これから騎士団長の刺すような視線の前に立たされる自分を想像し、アシェットは胃が痛むのを感じた。

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