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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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シゾンタニアへ到着したユーリは街の現状を見て眉をひそめた。
人がいない。
空き家は多い。おそらく、別地域へと避難したのだろう。
加えて、街を出歩くものもいない。
本来ならば、街の住民に話を聞きたいところであったのだが、それをすることはかなわず、ユーリは騎士団駐屯地へと足を向けた。

駐屯地に辿り着いたものの、そこもやはりもぬけの殻。
もともと、駐屯するに騎士の人数が少ない街だ。ここに残る人員を割いていては討伐に支障が出る。
ここにある全勢力をもって討伐に向かったのだろう…勝つために。
万が一のことを考えれば利巧とは言えないが……

そういうのは嫌いじゃねぇ

ユーリは口の端に笑みをのせる。
だが、これで騎士団が討伐に向かった先を詳しく知ることができなくなった。
たしか、あの男が言っていたのはどっかの遺跡ということだったが……
ユーリが頭を悩ませていると、どこからか犬の鳴き声が聞こえてきた。
その声は必死に何かを訴えているように聞こえる。
ユーリはそれに誘われるように犬舎に足を向けた。



窓からひょいと中を覗き込む。
鳴き声の主はあっさり見つかった。
木の枝を口にくわえた青い仔犬。
どこか目つきの悪い犬はユーリをみると大きく一声鳴いた。

「留守番か?ちび」
「ウー…ワン!」
「違うって?おいてけぼりか」
「ワンワン!」

仔犬は不満そうに鳴くと、連れて行けとばかりにユーリのいる方の壁に向かってジャンプを始めた。

「ははっ、なら俺と一緒に行くか?」
「ワン!」

もちろん、というように尻尾を振る仔犬にユーリは手を差し伸べる。
そして、小さな体を抱え上げた。

「じゃあ、よろしくな。ラピード」
「ワン」

犬舎に書かれていた名を呼んでみると満足げな鳴き声を上げる。
どうやら、この仔犬の名はラピードで間違いないようだ。
ユーリは同行者となったラピードを連れて再び歩き始めた。




「……はぁっ……やぁっと追いついた」

レイヴンがユーリの姿をみつけたとき、一人と一匹は森の中を歩いていた。
ラピードは時折道に残った匂いを嗅ぎながら歩いており、はたから見ればのんびり犬の散歩をしているように見える。
ラピードはどうやら先に行った騎士団の者たちを匂いをたどって追ってくれているようだが、仔犬の足はどうしても遅い。
ユーリは仔犬をせかすことなくのんびりと歩いてはいるが、それをつけていくレイヴンのほうが先に限界に来た。

「あーもうっ」

本当いつもどおり後ろで見ておくだけのはずだったのに!

覚悟を決めてユーリの前に姿を見せた。
仔犬が吠える中、見つめあうこと数秒。
ユーリは満面の笑みを浮かべて一言。

「ああ、遅かったな」

なにを言おうか悩んでいたレイヴンは言われた言葉が一瞬理解できなかった。
次いで、ユーリから放たれた言葉。

「ドンにあんた貸してくれって頼んどいたからな。けど、ずいぶん遅かったじゃねぇか。道草でも食ってたか?」


……
………
…………あんのジジイ!

本人を目の前にしては決して言えはしないことを頭の中で羅列する。
結局、いいようにはめられたのだ。
ドンは何も言いはしないが、自分がシュヴァーンとして行っている仕事も知っているに違いない。
それをも利用して今回もまたいいように面倒事を押し付けてきたのだ。
文句の一つでも言えるものなら言ってやりたいが、結局弱みを握られてるのは自分の方。
ドンから言われることは諾々とこなすしかないのだ。

レイヴンは長く長くため息をつく。

「………じゃ、行きましょうか」
「なんだ、えらく疲れてるな。休むか?」
「……そんなひまないでしょ」
「まぁ、そうだな」

ユーリは自分を見上げているラピードを抱き上げ、己の懐に入れると刀をかついで言った。

「じゃ、行くか」

森の木の合間から遺跡らしき建物が見え始めていた。

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