TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。
出版元・製作元様方には一切関係ありません。
また、突然消失の可能性があります。
嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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ザウデへと向かう船の中。大変重い空気に包まれていた。
ユーリがデュークを説明する際に使った『人間嫌い』という言葉は実に的確な表現であったようで、男は全くと言っていいほど口を開かない。
アレクセイの方も何も言わないので、当然船の上での会話はない。
重い
初めのうちは我慢していたシュヴァーンであったが、テルカ・リュミレースのへそと呼ばれる海域にあるザウデへはそれなりの時間を有する。
その間、この針の筵のような空間ですごすことに、さすがのシュヴァーンも気力を削がれていた。
どちらかが一言でも話してくれればこの重い空気も少しは解消される気もするが、その二人にそれは望めない。
このまま耐えるべきか、自分から口を開くべきか。
悩んだ挙句、答えが返ってこないことを覚悟の上で、デュークに声をかけることにした。
「デューク。ローウェル隊長とはどこで知り合ったんだ?」
ユーリはすでに隊長ではないのだが、こう呼ぶ方が今の自分にとってはしっくりくる。
じっと相手の反応を窺っていると、今まで何の反応も見せなかったデュークがちらりと横目で見た。
だが、その瞳はすぐにそらされる。
やはり答えてはくれないか…そう諦めかけたとき、ぽつりと波音に消えそうなくらい小さな声でデュークが呟く。
「……人魔戦争だ」
「……え?」
今のが答えなのか。
デュークを見るが、彼はまっすぐに海を見つめるばかりでこちらとは目を合わせない。
だが、応えを返したということは話す気はあるということだろう。
重ねて問いかける。
「どうやって?そちらは騎士団には所属していなかったはず…」
「………」
かつて人と始祖の隷長の間で勃発した争いは、後に人魔戦争と呼ばれた。
10年以上も前の話であるため、自分はまだ騎士団には所属してはいない身ではあったが、当時のことは嫌というほど覚えている。
何せ、自分を騎士団に入らざるを得なくした理由を作ったのが、人魔戦争であったのだから…。
無意識に自分の左胸を抑える。
手に触れる硬い感触。
戦争に巻き込まれて死ぬはずであった自分を助けたこれは、同時に自分を縛りつける鎖となった。
これを植え込んだ男…アレクセイが、何を考えて当時の自分を選んだのかは分からない。
だが、それ以降自分はアレクセイのもとで働くことを余儀なくされた。
人魔戦争のことは帝国に隠されて一般には知れることはなかったが、騎士団に入った自分はアレクセイの指示で動くにつれ、当時のことをわずかながら知ることができた。
その一つが、この男…デュークの存在である。
当時、傭兵として戦に参加したこの男は、そのたぐいまれなる才を発揮して、帝国の勝利に貢献した…とか。
だが、戦の後に彼は姿を消し、帝国は彼の功績すら抹消した。
その理由があるのであろうが、それは調べても分かりはしなかった。
あの戦争で何があったのか。
それをこの男は知っている。
そして、なぜかそこにユーリが関わっている。そんな気がした。
じっとデュークを見る。
デュークは一つため息をつくと、口を開いた。
「奴に命を助けられた」
端的な一言。
自分にはその言葉以上のことは分からなかったが、アレクセイには思い当るところがあったらしい。
その瞳が初めてまともにデュークに向けられた。
「なるほどな。あの数の討伐隊から逃げ伸びたのは奴の手引きか」
アレクセイの言葉に、デュークの眼光が鋭さを増す。
どうやら、それはデュークにとって触れられたくない部分であるようだ。
危うげな空気が流れたが、それはデュークが瞳をそらすことで途切れた。
もう話すことはない。そう彼の背が語っている。
話を始める前よりも険悪となった雰囲気に、そっと溜息をついた。
ユーリがデュークを説明する際に使った『人間嫌い』という言葉は実に的確な表現であったようで、男は全くと言っていいほど口を開かない。
アレクセイの方も何も言わないので、当然船の上での会話はない。
重い
初めのうちは我慢していたシュヴァーンであったが、テルカ・リュミレースのへそと呼ばれる海域にあるザウデへはそれなりの時間を有する。
その間、この針の筵のような空間ですごすことに、さすがのシュヴァーンも気力を削がれていた。
どちらかが一言でも話してくれればこの重い空気も少しは解消される気もするが、その二人にそれは望めない。
このまま耐えるべきか、自分から口を開くべきか。
悩んだ挙句、答えが返ってこないことを覚悟の上で、デュークに声をかけることにした。
「デューク。ローウェル隊長とはどこで知り合ったんだ?」
ユーリはすでに隊長ではないのだが、こう呼ぶ方が今の自分にとってはしっくりくる。
じっと相手の反応を窺っていると、今まで何の反応も見せなかったデュークがちらりと横目で見た。
だが、その瞳はすぐにそらされる。
やはり答えてはくれないか…そう諦めかけたとき、ぽつりと波音に消えそうなくらい小さな声でデュークが呟く。
「……人魔戦争だ」
「……え?」
今のが答えなのか。
デュークを見るが、彼はまっすぐに海を見つめるばかりでこちらとは目を合わせない。
だが、応えを返したということは話す気はあるということだろう。
重ねて問いかける。
「どうやって?そちらは騎士団には所属していなかったはず…」
「………」
かつて人と始祖の隷長の間で勃発した争いは、後に人魔戦争と呼ばれた。
10年以上も前の話であるため、自分はまだ騎士団には所属してはいない身ではあったが、当時のことは嫌というほど覚えている。
何せ、自分を騎士団に入らざるを得なくした理由を作ったのが、人魔戦争であったのだから…。
無意識に自分の左胸を抑える。
手に触れる硬い感触。
戦争に巻き込まれて死ぬはずであった自分を助けたこれは、同時に自分を縛りつける鎖となった。
これを植え込んだ男…アレクセイが、何を考えて当時の自分を選んだのかは分からない。
だが、それ以降自分はアレクセイのもとで働くことを余儀なくされた。
人魔戦争のことは帝国に隠されて一般には知れることはなかったが、騎士団に入った自分はアレクセイの指示で動くにつれ、当時のことをわずかながら知ることができた。
その一つが、この男…デュークの存在である。
当時、傭兵として戦に参加したこの男は、そのたぐいまれなる才を発揮して、帝国の勝利に貢献した…とか。
だが、戦の後に彼は姿を消し、帝国は彼の功績すら抹消した。
その理由があるのであろうが、それは調べても分かりはしなかった。
あの戦争で何があったのか。
それをこの男は知っている。
そして、なぜかそこにユーリが関わっている。そんな気がした。
じっとデュークを見る。
デュークは一つため息をつくと、口を開いた。
「奴に命を助けられた」
端的な一言。
自分にはその言葉以上のことは分からなかったが、アレクセイには思い当るところがあったらしい。
その瞳が初めてまともにデュークに向けられた。
「なるほどな。あの数の討伐隊から逃げ伸びたのは奴の手引きか」
アレクセイの言葉に、デュークの眼光が鋭さを増す。
どうやら、それはデュークにとって触れられたくない部分であるようだ。
危うげな空気が流れたが、それはデュークが瞳をそらすことで途切れた。
もう話すことはない。そう彼の背が語っている。
話を始める前よりも険悪となった雰囲気に、そっと溜息をついた。
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