[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「…っ…こんなことが……」
ザウデの中枢。
一人ザウデの術式を解析していたアレクセイはその手を止め、壁に拳を叩きつけた。
アレクセイがおかしな真似をせぬようにその様子を監視していたデュークは、アレクセイの様子を見て静かに言葉を紡いだ。
「それがザウデの役割。この世界の真実」
アレクセイが何を知ったのかは分からないが、その様子から生半可なものではないと知れる。
この場でそれを知らぬのは自分だけ、という疎外感を感じつつデュークを見れば、それを察したのか無口な男が再度口を開いた。
「古代ゲライオス文明で数多くの魔導器が作られ、人はそれを使用してきた。だが、魔導器はエアルの乱れを引き起こす。一つ一つは微々たるものでも、世界中で魔導器が使用されれば、その乱れは巨大なものになる。始祖の隷長らはエアルの乱れを調整し続けてきたが、人が引き起こしたエアルの乱れは始祖の隷長らの調整能力をついに上回った。ゲライオス文明の末期…世界に災厄が訪れた」
「災厄?」
そのようなこと、文献には残されていない。
確かに、古代ゲライオス文明は突如滅び去っているが、それはその災厄のためだというのだろうか
眉をひそめる自分をよそに、デュークの話しは続く。
「星喰みと呼ばれた災厄はその名の通り、星の命ともいえるエアルを喰う。エアルを用いた術式は星喰みには通用せず、世界は滅びの時を迎えようとした。その時になって人はようやく気付いたのだ。自らの過ちを」
デュークはまっすぐに空を見上げる。
その瞳は憎い仇を見るかのように赤く燃えていた。
「当時の指導者であった満月の子らは、その命を原動力としてこのザウデを起動させた。星喰みを遠ざけるために」
「ではザウデは巨大な結界魔導器ということか」
「そうだ。そして、残った満月の子が魔導器を地中へ破棄し、魔導器を管理するためとして帝国を興した。だが、結局は同じこと。人はまた同じ過ちを繰り返す。…愚かしいことだ」
言葉の節々に、人に対する嫌悪感を感じる。
空を見ていたデュークの瞳が、今度はアレクセイに向けられる。
「貴様はどうする」
愚か者となるか?
そうデュークは無言で尋ねる。
その手には抜き身の宙の戎典が握られており、返答如何によってはこの場でアレクセイを斬る気なのがありありとわかる。
アレクセイはデュークをちらりと見たのみで、無言で手を下ろした。
「戻る。あの男の思い通りになるのは癪だが……仕方あるまい」
あの男…とはおそらくユーリのことだろう。
デュークの問いに対して明確な答えは口にせず、アレクセイは出口へと足を向けた。
彼は心を決めたのだろう。
では、自分は…?
そんな心の迷いを見透かしたように、アレクセイの瞳がシュヴァーンを射抜く。
「シュヴァーン、お前はどうする気だ」
それに対する答えはまだ持ってはいなかった。
だが一つ言えること…。
「最後まで見届けさせてもらいます」
たとえそれがどのような結果になろうとも、それが今まで自分がしてきたことのけじめになるだろうから。