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がらがらと壁が崩れる。
そのがれきをつなぎとめるように張り巡らされた赤い糸は、人形を操る糸のように働き、やがて巨大なゴーレムを作りだした。
暗く光る赤い瞳は、さもそれが生きているかのように見え、不気味さを醸し出している。
先に戦ったときと同タイプであることから、あの赤い糸を切ってしまえば動きは止まり、ゴーレムはただの土くれに戻るだろうことは想像できたが、今度の敵は巨大すぎた。
糸を切ろうにもゴーレムの上部まで攻撃は届かず。
また、巨大な体躯が繰り出す拳は、その重量から振り下ろすだけですさまじい破壊力をもっていた。
「固まるな!」
上から繰り出される拳をすんでのところで避けつつ、ナイレンは指示を飛ばす。
一つにまとまっていては格好の的だ。
しかし、ゴーレムの攻撃を避けはしたものの、衝撃波までは避けることはできず…
ナイレンは踏みとどまったものの、女性で身軽なヒスカはそれに耐えきれなかった。
バランスを崩した彼女のもとに一本の赤い糸がゴーレムから離れ、一直線に走ってきた。
「くそっ」
とっさに彼女の手をひいて自分の背後に庇う。
だが、赤い糸は生き物のように自在に方向を変え、今度はナイレンに狙いを定めた。
避けきれない。
それが与えるであろう衝撃を覚悟する。
だが、それはナイレンの身を襲うことはなかった。
目の前を風を切って何かが通り過ぎていく。
それはナイレンに襲いかかろうとしていた赤い糸を切り裂くと、弧を描きそのままゴーレムへと向かっていく。
そして、巨大なゴーレムの上部の赤い糸をも切り裂いた。
途端、支えを失ったようにゴーレムは崩れおち、無数の瓦礫となって地に倒れた。
ゴーレムをただの土くれとなしたものはそのままの勢いで床に刺さる。
それは一本の斧だった。
それを見たナイレンの顔に笑みが上った。
「おせぇよ」
「わりぃな」
ナイレンの呟きに声が返る。
土埃の中から現れたのは、勝気な笑みを浮かべたユーリ・ローウェル。
ユーリはそのままナイレンのもとに歩んでいくと、ぱん、と手を合わせた。
それだけで、この二人が互いをどれだけ信頼しているかが伝わってくる。
その姿をラピードを胸に抱いたレイヴンがくたびれた様子で見ていた。
ゴーレムを一人であっさりと倒すユーリと、それを当然のことのように受け止めるナイレン。
信頼していると言えばそうなのだろうが…
「はちゃめちゃよね、あの二人」
「ワゥ」
自分の言葉を肯定するように答えるラピードを撫でつつ、レイヴンはため息をついた。