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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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「魔物の凶暴化って…ホントみたいね…っと」

体をのけぞらせて、背後に矢を放つ。
放たれた矢は的確にウルフの目を深々と射抜いた。
ウルフは駆ける勢いのまま数歩走り、そのまま地面に倒れ伏した。
動かなくなった躯を眺め、一息つく。
しかし、すぐにこの場を離れなければ、血の匂いにつられた魔物が再びやってくるだろう。
レイヴンは遠くに見える色づいた木々を眺める。
紅葉には早すぎる季節。
異変が起こっているのは確かなようだ。

…こりゃ、さっさと街に行ったほうがよさそうね。

このままここにいては、一体どれほどの魔物と戦うはめになるか分からないし、なにより、もたもたしていると状況はさらに悪化いていくことだろう。
幸い、街はすぐ近く。
レイヴンは結界魔導器の放つ光を目指し、走った。





街にたどりついたレイヴンは、住民の雰囲気に眉を寄せた。
街を歩く者は少なく、活気が見られない。
空き家も目立つ。
歩いているものも、どことなく沈んだ様子で、情報を収集するのも難しそうだ。

「仕方わね…酒場にでも行きますか」

この街に拠点を置くギルドのボスをドンから紹介されている。
その男ならば、この街に起こったことの子細を知っているだろう。

酒場のありそうな方は…とあたりを見回していると、視界の端に青いものが映った。
思わず、さっと身を隠す。
別に、逃げなければいけない理由なのないのだが、自分を知っている人間がいたら困るのと、呼び止められでもしたら面倒…などの理由から、騎士団をみると身を隠す癖がついてしまっている。
物陰からそっと窺うと、顔から背格好までよく似た二人の女騎士と、金色の髪の騎士の姿があった。
何やら雑談をしながら歩いていることから、見回りの最中というわけではないらしい。
彼らが過ぎ去るのを待ってから、足早に石畳を歩く。
幸い、お目当ての酒場はすぐに見つかり、さっと扉を開いて中へ足を踏み入れた。

薄暗い室内。
一応開店はしているようで、無愛想なバーテンダーがちらりと視線をよこした。
それに軽く手を挙げると、お目当ての人間を探すために視線をさまよわせる。
薄暗いとはいえ、広くない室内。
お目当ての人物は簡単に見つかった。

「おじゃましますよっと」

へら、と笑って声をかけると、巨躯の男は不快そうに髭面を歪めた。

「何だてめぇは。ここの人間じゃねぇだろ」
「まぁね。お使いなのよ」

誰からの、とは言わないで、すっと一通の書状を差し出した。
男はそれに押された紋を見て、器用に片眉をあげると、奪い取るように書状をひったくり、びりびりと破いて封を開けた。
しばらくはそれを黙読していた男だったが、それに火をつけて燃やしてしまうと、今度はまじまじとレイヴンの顔を見た。

「……てめぇがレイヴンか」
「そぉよ」
「………」

見定めるような視線。
そうやって見分されるのはもう慣れっこだ。
ドンの使いとして動く時、たいてい相手からはこうやって見られる。
飄々とした体を崩さずに、相手が答えを出すのを待っていると、どん、と目の前に酒が置かれた。
顎で座るように促され、おとなしくそれに従う。
大男は自分をメルゾムと名乗ると、前置きなしに本題に入った。

「わりぃが俺たちも正直何が起こってるかは分からねぇ。その辺は騎士団が情報統制してやがるからな」
「ま、そうよねぇ……」

騎士団が駐屯している以上、街の防衛は騎士団が担う。
作戦にかかわることはすべて秘匿扱いとなるため、市民が知れる情報などたかが知れている。
ここを拠点にしているギルドといえど、情報を専門に扱うギルドでもない限り、多くの情報を手に入れるのはやはり難しいようだ。

「詳しいことは分からねぇが、こんなことが起こりだしたのは、そう昔の話じゃねぇ。始まりが何だったかなんて覚えちゃいねぇがな、魔物の凶暴化だのなんだのって言われだしたのはここ1,2カ月ぐらいだ」
「ふぅん…でも、それだけならわざわざドンが気にしたりしないわよね」
「ただの凶暴化ならいいんだがな、どうやら繁殖能力も上がっちまったらしい。倒しても数は全く減らねぇ。増えてくばっかりだ。ついこないだ騎士団が大規模な魔物掃討作戦をしたらしいが…それもどんだけ効くかな」

大規模な掃討作戦。
それをするにはそれなりの装備・資金が必要になる。
ならば、確実にこの話はアレクセイに伝わっていることだろ。
あの男は些細なことであろうとも、自分で知っておかねば気が済まない。
自分しか信用していないために…。
その男が、この状況を放置している。
ならば、この事象は男の計画に支障がないか、男の計画の内かのどちらかだ。
大体のことは計画に支障がないと捨て置かれていることであるのだが、どうも今回のことは違うように感じる。

…詳しい情報が欲しいとこだけど…どうしたもんかねぇ……

レイヴンは顎の無精ひげをなでながら頭を悩ませる。

「詳しい情報が欲しいんなら、騎士団の後つけて盗み取るしかねぇぞ」
「…やっぱそうなるかねぇ……」

レイヴンはどっぷりとため息をつく。
ドンが自分をここに回した理由が痛いほどよくわかった。



あー…もう、厄介なことにならないうちに帰りたいわね
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