TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。
出版元・製作元様方には一切関係ありません。
また、突然消失の可能性があります。
嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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流血描写が含まれますので、苦手な方は注意を。
ユーリは静かに平野を駆けた。
幸いにも騒ぎの間に日は暮れ、身を隠すのにはもってこいの時間帯。
ユーリは夕闇に紛れるように走った。
日が暮れた後では目的の人物も探しにくくなるものではあるが、キュモール相手ではそれは当てはまらない。
ご丁寧に大きな馬車の周りに火を焚き、警備の騎士が周りを固めている。
「まったく、隠れて行動する気がないのか、こいつらは」
思わず口からため息がもれる。
どの貴族もそうだ。
自分が我慢するというのは拒否するくせに、周りのミスには厳しい。
奴は警備の中でぬくぬくと報告を待っているのだろう。
ユーリは気力が萎えそうになる自分に喝をいれて、剣を握った。
「がっ」
「貴様、何者……うあぁ!」
「こいつっ」
「なんだい?騒がしいね」
うとうととしていたキュモールは目をこすりながら体を起こした。
どうやら、警備の騎士が何者かと争っているらしい。
詳しい状況までは分からないが、何者かが集団で襲ってきた様子もないし、武器同士が切り結ぶ音などしないから、相手は魔物か何かなのだろうと見当をつける。
それに、何かあれば真っ先に報告が来るはず。
それが来ないとなると、どうせ大したことはないのだろう。
魔物ごときの襲撃を受けたくらいで自分を起こすなとも命じてある。
キュモールはすぐに静かになった外を確かめることもせず、再び布団を引き寄せる。
しかし、それをかぶって横になることはかなわなかった。
何かが馬車の上にトン、と乗るような音がした直後。まるで自分の位置がわかってるかのように上からまっすぐに剣が突き刺された。
「ひっ…ひぃいいい!」
剣先はキュモールの頬をかすめて止まる。
キュモールは自分の頬に温かな滴が伝うのを感じると、馬車の扉を開け、外に転がり出た。
すぐに警備の騎士を怒鳴りつけようとしたが、その目に映ったのは一人残らず倒された騎士たちの姿。
「なっ……なっ!」
驚きのあまり言葉にならない声を発するキュモールの背後で足音が聞こえる。
キュモールは勢いよく背後を振り返った。
目に入った人物はキュモール自身も知る人物。
「貴様、ユーリ・ローウェル!」
ユーリの顔を見た瞬間、キュモールはおびえから憎しみへその表情を変えた。
ユーリは一切の感情を窺わせぬ冷えた表情で、キュモールを見返した。
「貴様みたいな下賤なものが、貴族である僕に向かって何を…!」
「黙れよ」
金切声でまくしたてるキュモールに辟易したユーリはそれをやめさせるために左手に持つ刃を、キュモールの鼻先に突きつけた。
「ひっ…こんなことして、どうなるかわかって…」
「別にどうもならないさ。お前一人消えたところで…何も変わらない」
ユーリは自嘲気味に笑う。
しかし、剣先はわずかにもぶれることなく、それがキュモールの恐怖をあおった。
服が泥にまみれるのも構わず、キュモールは尻もちをついたまま後ずさる。
ユーリはあえてそれを追わなかった。
わずかずつではあるが、二人の間に距離が開く。
しかし、それでは逃げることはできないとキュモールにも分かっていた。
しかし、そうせずには居られなかった。
やがて、後ずさるキュモールの背が木にあたる。
ユーリはおびえるキュモールに一歩一歩歩み寄った。
「何も変わりはしねぇが、少しの間でも生きやすい世の中にはなるだろ」
「ひっ…た、たすけ……」
雲に隠された月が顔をのぞかせ、あたりがうっすら明るくなる。
その時、キュモールは見た。
ユーリの剣に刻まれた紋様を。
「あ、あ、暗行……」
しかし、その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
「ユーリ・ローウェル……貴様……っ!」
ユーリはゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、こちらを睨みつけるソディアの姿があった。
こと切れたキュモールと血に濡れた刀。
瞬間を見ていなくとも、一目瞭然。
ソディアは怒りにまかせ、ユーリに叫んだ。
「貴様、隊長の友人でありながら、人殺しを……!」
「そんなこと、何の関係もねぇよ」
敬愛する隊長をそんなこと扱いされ、貶められたとおもったか、ソディアの目つきが厳しさを増す。
彼女はためらいなく剣を抜いた。
「貴様のようなものは、隊長のためにならない!」
「なら、激情にまかせて己の職務を忘れるような副官はためになるのか?」
「黙れ!」
ソディアは感情に流されるまま剣を振るう。
しかし、そのような剣ではユーリをとらえることはできない。
無駄のない動きでユーリは剣を避ける。
「貴様のような奴はぁ!!」
「…うるせぇよ!」
まっすぐにユーリに向かって振り下ろされた剣。
ユーリはそれめがけて自らの剣を振るった。
硬質な音が響き、ソディアの剣が弾き飛ばされる。
剣は回転しながら弧を描き、地面に突き刺さった。
呆然とするソディアを一瞥すると、ユーリは剣をおさめた。
「半端な覚悟しかねぇ奴に命やるわけにはいかねぇんだよ」
ソディアはぐっと唇をかんだ。
言い返したいことは山ほどある。けれど、言葉が出てこなかった。
ユーリはそんなソディアを見ぬまま、その場を後にした。
ユーリ・ローウェルがキュモールを殺して逃走
その知らせは、その日のうちにフレンに届けられた。
初めは信じなかったフレンだったが、キュモールの体に残された迷いない太刀筋と、当時警備をしていた騎士たちの証言から、それを真実と認めざるを得なかった。
フレンはユーリの消息を追ったが、その行方をつかむことはできなかった…。
ユーリは静かに平野を駆けた。
幸いにも騒ぎの間に日は暮れ、身を隠すのにはもってこいの時間帯。
ユーリは夕闇に紛れるように走った。
日が暮れた後では目的の人物も探しにくくなるものではあるが、キュモール相手ではそれは当てはまらない。
ご丁寧に大きな馬車の周りに火を焚き、警備の騎士が周りを固めている。
「まったく、隠れて行動する気がないのか、こいつらは」
思わず口からため息がもれる。
どの貴族もそうだ。
自分が我慢するというのは拒否するくせに、周りのミスには厳しい。
奴は警備の中でぬくぬくと報告を待っているのだろう。
ユーリは気力が萎えそうになる自分に喝をいれて、剣を握った。
「がっ」
「貴様、何者……うあぁ!」
「こいつっ」
「なんだい?騒がしいね」
うとうととしていたキュモールは目をこすりながら体を起こした。
どうやら、警備の騎士が何者かと争っているらしい。
詳しい状況までは分からないが、何者かが集団で襲ってきた様子もないし、武器同士が切り結ぶ音などしないから、相手は魔物か何かなのだろうと見当をつける。
それに、何かあれば真っ先に報告が来るはず。
それが来ないとなると、どうせ大したことはないのだろう。
魔物ごときの襲撃を受けたくらいで自分を起こすなとも命じてある。
キュモールはすぐに静かになった外を確かめることもせず、再び布団を引き寄せる。
しかし、それをかぶって横になることはかなわなかった。
何かが馬車の上にトン、と乗るような音がした直後。まるで自分の位置がわかってるかのように上からまっすぐに剣が突き刺された。
「ひっ…ひぃいいい!」
剣先はキュモールの頬をかすめて止まる。
キュモールは自分の頬に温かな滴が伝うのを感じると、馬車の扉を開け、外に転がり出た。
すぐに警備の騎士を怒鳴りつけようとしたが、その目に映ったのは一人残らず倒された騎士たちの姿。
「なっ……なっ!」
驚きのあまり言葉にならない声を発するキュモールの背後で足音が聞こえる。
キュモールは勢いよく背後を振り返った。
目に入った人物はキュモール自身も知る人物。
「貴様、ユーリ・ローウェル!」
ユーリの顔を見た瞬間、キュモールはおびえから憎しみへその表情を変えた。
ユーリは一切の感情を窺わせぬ冷えた表情で、キュモールを見返した。
「貴様みたいな下賤なものが、貴族である僕に向かって何を…!」
「黙れよ」
金切声でまくしたてるキュモールに辟易したユーリはそれをやめさせるために左手に持つ刃を、キュモールの鼻先に突きつけた。
「ひっ…こんなことして、どうなるかわかって…」
「別にどうもならないさ。お前一人消えたところで…何も変わらない」
ユーリは自嘲気味に笑う。
しかし、剣先はわずかにもぶれることなく、それがキュモールの恐怖をあおった。
服が泥にまみれるのも構わず、キュモールは尻もちをついたまま後ずさる。
ユーリはあえてそれを追わなかった。
わずかずつではあるが、二人の間に距離が開く。
しかし、それでは逃げることはできないとキュモールにも分かっていた。
しかし、そうせずには居られなかった。
やがて、後ずさるキュモールの背が木にあたる。
ユーリはおびえるキュモールに一歩一歩歩み寄った。
「何も変わりはしねぇが、少しの間でも生きやすい世の中にはなるだろ」
「ひっ…た、たすけ……」
雲に隠された月が顔をのぞかせ、あたりがうっすら明るくなる。
その時、キュモールは見た。
ユーリの剣に刻まれた紋様を。
「あ、あ、暗行……」
しかし、その言葉が最後まで紡がれることはなかった。
「ユーリ・ローウェル……貴様……っ!」
ユーリはゆっくりと後ろを振り返る。
そこには、こちらを睨みつけるソディアの姿があった。
こと切れたキュモールと血に濡れた刀。
瞬間を見ていなくとも、一目瞭然。
ソディアは怒りにまかせ、ユーリに叫んだ。
「貴様、隊長の友人でありながら、人殺しを……!」
「そんなこと、何の関係もねぇよ」
敬愛する隊長をそんなこと扱いされ、貶められたとおもったか、ソディアの目つきが厳しさを増す。
彼女はためらいなく剣を抜いた。
「貴様のようなものは、隊長のためにならない!」
「なら、激情にまかせて己の職務を忘れるような副官はためになるのか?」
「黙れ!」
ソディアは感情に流されるまま剣を振るう。
しかし、そのような剣ではユーリをとらえることはできない。
無駄のない動きでユーリは剣を避ける。
「貴様のような奴はぁ!!」
「…うるせぇよ!」
まっすぐにユーリに向かって振り下ろされた剣。
ユーリはそれめがけて自らの剣を振るった。
硬質な音が響き、ソディアの剣が弾き飛ばされる。
剣は回転しながら弧を描き、地面に突き刺さった。
呆然とするソディアを一瞥すると、ユーリは剣をおさめた。
「半端な覚悟しかねぇ奴に命やるわけにはいかねぇんだよ」
ソディアはぐっと唇をかんだ。
言い返したいことは山ほどある。けれど、言葉が出てこなかった。
ユーリはそんなソディアを見ぬまま、その場を後にした。
ユーリ・ローウェルがキュモールを殺して逃走
その知らせは、その日のうちにフレンに届けられた。
初めは信じなかったフレンだったが、キュモールの体に残された迷いない太刀筋と、当時警備をしていた騎士たちの証言から、それを真実と認めざるを得なかった。
フレンはユーリの消息を追ったが、その行方をつかむことはできなかった…。
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