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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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ケテルブルグでの朝。
さわやかな朝の日差しを感じ、ルークは瞳を開けた。
しかし、真っ先に目に映ったのは明るい日差しでもなく、ただの天井でもなく、赤い目。
思わず叫びそうになったルークの口を、大きな手がふさいだ。

「静かにしてくださいね。誰かに見られては大変ですから」

あんたが驚かしたんだろ、と言いたくても、ルークの口はふさがれている。
ルークは恨みがましい視線でジェイドを見た。
しかし、ジェイドはそんなことは軽く受け流し、もう用はないとばかりに、あっさりとルークの側から離れた。
やけにあっさりと解放されたのはいいが、何で朝っぱらからあの状態だったのか理解できないルークはジェイドを見つめる。

「…で、なんなんだよ朝っぱらから」
「いえ、ちょっと調べごとを」
「だから、何だって」
「まぁ、左耳を何かで抑えて待ってなさい」

ルークがじっと見つめる横で、ジェイドは音機関を取り出して何やら行っている。
それが何を行っているのかは、ルークにはわからない。
ひとまず、大人しく言われたとおりに耳に手をやる。
すると、何か指先に感じる違和感と、耳たぶに軽く走る痛み。
再び視線の先に指を戻すと、指の先にほんの少しだがついているのは、自分の血液。

あ、俺って血が出るんだ。

妙なところで感動をおぼえていると、ジェイドからタオルが投げられた。

「あ、ありがと」

傷をつけたのはおそらくジェイドだが、とりあえず気遣ってくれたみたいだから礼を言っておく。
ジェイドはそれには答えず、しばらくしてようやく音機関から目を離した。

「今のあなたは完全に第七音素そのものですね」
「え?」
「振動数はこっちのルークも同じですが、あなたは血液も全て第七音素だ」
「えっと・・・要するに?」


「あなたはヒトではないということですよ」


生物が食物を摂って生きている以上、いくらレプリカでも全ての音素が一つではない。血中の音素は複数の音素が交じり合い、存在しているはずである。それがたった一つで構成されるとすれば、それは一言で言えばヒトではないものとなる。

ジェイドの言葉は、意外にもすんなりとルークの中に入ってきた。
おそらく、なんとなくわかっていたからだろう。
ローレライに過去に送ってもらい、自分が透けていると気づいたときに。
だから、血が流れる自分にも驚いた。

でも・・・わかっていても、ジェイドに言われて少し寂しかった。

それが顔に出ていたのだろうか。
ジェイドが一つため息をつき、口を開いた。

「別に、ヒトでなくてもあなたはあなたですよ。何も変わりはしない。むしろ、ヒトではないからこそ、ヒトのしがらみに囚われず望むことができる」
「・・・あんたがそういうこと言うとか・・・雨降りそう」
「どこぞの子どもが手間ばっかかけてくれますからねぇ」
「う・・・ごめん」
「この場では不適切な言葉ですね」

ジェイドの言葉に目を丸くしたルークだったが、次の瞬間には満面の笑みを浮かべた。

「ありがとう」

ジェイドは軽く肩をすくめて、すぐに背を向けて部屋を出るために歩き出す。
それがジェイドの照れ隠しなのだとかつての旅の間で知っているルークは、湧き上がる笑みを隠し切れないまま、精神体となってジェイドの後を追った。
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