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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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「メシュティアリカ…」

最愛の妹の声に、ヴァンの注意が一瞬だがシンクたちからそれた。
その一瞬の隙を突いて、短刀を構えたシンクが間合いをつめ、首に狙いを定めた。
だが、ヴァンもとっさの判断で首を逸らす。

甲板に赤が散った。

「ぐ…シンク!」

致命傷を避けたヴァンは傷を抑えながらも、シンクの体を跳ね飛ばした。
シンクはヴァンに飛ばされた勢いで、甲板の柵に体を打ち付ける。
その様子を見て、ルークが駆け寄ろうとするが、ヴァンが自分に剣を向けたためそれも叶わない。

「ルーク…おまえ、どうして…」

ガイが呆然と呟く声が聞こえたが、ルークは何も答えない。
ただ、まっすぐにヴァンを見据えていた。

「あなたが乗り込んでくるとは…よほど地核を静止されたら困るんですねぇ」
「勘違いしないでもらおうか、死霊使い殿。私は私の計画を邪魔する不穏分子を抹消するためにここにいる。地核の静止など私の計画の前では些細な事に過ぎない」
「計画…外殻大地を落とし、再びフォミクリーで世界を作ることがですか?」

ジェイドの言葉に、皆が息を呑む。

「ふ…気づかれていたか。なら話は早い。この計画に手をかしていただけるなら、貴殿の命も保障しよう…バルフォア博士。この世界を救うためには他に道はない」
「お断りです。たとえあなたが言うように、その計画で世界が救われるのだとしても、そのような世界、何の意味もない」
「残念だ。…アッシュ、お前ももう十分だろう。いい加減に戻って来い」

目を向けられたアッシュはヴァンを睨みつけた。

「あんたこそ、もう十分だろう。本当にそんな計画が通ると思っているのか!?」
「通るのではない。通すのだ。我々が動かなければ世界は変わらない!」
「いい加減目を覚ませ、ヴァン!アンタが正しいなら、どうしてシンクがアンタから離れた!?」

アッシュの叫びに、ヴァンは笑みを浮かべる。

「何を言う、アッシュ。それはお前とは違う、駒だ。捨てられるところだったのを使えるから拾ってやった。使えなくなれば再び捨てるだけだ」
「はっ…言ってくれるね。誰も拾ってくれなんていってないよ。いっそ、あの時捨ててくれれば…いや、作られないほうが良かった。こんな意味のない生を受けるぐらいならさぁ!!」

立ち上がり、ヴァンを睨みつけたシンクの顔を見て、アッシュたちは息を呑んだ。

「嘘…イオン様と同じ…?」
「兄さん!これはどういうこと!?」

混乱のなか、アニスの後ろにいたイオンだけがゆっくりと足を踏み出した。

「やはり…あなたは僕と同じ…」
「はっ…違うね。お前と僕は違う。出来損ないの…捨てられるだけの僕とはね」
「そんな…」

ショックを受けるイオンに、アニスが寄り添う。
シンクはルークに視線をやりながら、言葉をつむいだ。

「決着をつけようよ、ヴァン。アンタが望む世界と僕の見たい世界。どちらが許されるかさ」
「まだやるか…無駄なことを」
「アンタにつけた傷…別に致命傷を外しても良かったんだよ。ただ、傷さえつけられればね」
「!…まさか!」
「劣化したとはいえ、導師と同じ第七音素の力その身で味わうといいよ」

シンクの言葉とともに、ヴァンの首筋の傷を中心に紋章が浮かび上がる。
その瞬間、ヴァンは苦悶の声を上げ、剣を取り落とした。
しかし、強い精神力かヴァンの第七音素の力か…ヴァンは意識を失わず必死にあがく。
だが、シンクの目的はヴァンを操ることではない。ただ一時、動きを止められればいいのだ。

「レンティス!」

シンクの声とともに、赤い影がヴァンの元へ走り、剣がヴァンめがけて振り下ろされた。

「が…っ」
「…さようなら、師匠」

肩から斜めに切られ、血を流して倒れるヴァンに、ティアが駆け寄る。
治癒術をかけようと手を伸ばすが、その手は迷うように止まった。
それを見たナタリアが、今度はヴァンに駆け寄る。

「何をなさっているのです!」
「でも…命を取り留めれば、兄さんはまた…」
「それでも、このままここで死なせてしまっても良いのですか!?例え敵でも失われていい命などありませんわ!」

そう言って治癒術をかけ始めるナタリアに促されるように、ティアも治癒術をかけ始めた。

一方、ヴァンとの戦闘で疲弊した上、術まで使ったシンクは力尽きたように手すりにもたれかかった。
そのシンクに、ルークは慌てて駆け寄る。

「…結局、あなたが望んだ世界とはなんだったのですか?」

戦闘態勢はとりつつも、成り行きを見守っていたジェイドがシンクに問いかける。
ワイヨン鏡窟でみたことと、ルークが言った謎かけとも取れる言葉で、ヴァンの目的には見当がついていた。
しかし、なぜシンクがヴァンを裏切ったのか、なぜルークを引き入れたのか、それはわからなかった。
ジェイドの問いに、シンクは自嘲の笑みを浮かべた。

「この世界に僕が望むものなんてないよ」
「じゃぁ、テメェは何のために動いた!」
「…ただ、預言預言いうこの世界を崩してやりたかっただけさ。預言のせいで僕は生まれた。なら、その預言をなくすことでこの世界に復讐してやりたかった。混乱する世界を見たかった。…ま、それももうどうでもいいけどね」
「…どういうことだ?」
「教えないよ」

あっさりというシンクに、アッシュは怒りの声を上げるが、シンクはそれを無視して自分の手を見つめた。


…限界かな…


「悪いけど、後は他の奴に聞いてよ。ラルゴでもヴァンでも…僕にはもう時間がないからね」

時間がないとは何を指すのか、ルークも不思議そうにシンクを見るが、その瞬間目を見開き動きを止めた。

「シンク…なんですけてんの?」
「…音素の乖離…ですか」

ジェイドの呟きに、アッシュは言葉を失う。
ヴァンのもとにいたアッシュだからこそ、それが何を示すのか瞬時に理解した。
しかし、ルークにはわからない。

「悪いけど、君は向こうに戻りなよ。居場所、あるみたいだし」
「何で…何でそんなこというんだよ。シンク、俺の居場所になるって言ったじゃん」
「悪いけど、僕は何も残せない」
「何で!?」
「レプリカは死ねば全て音素になって消える。何も残らないからね」
「それって…」

呆然とするルークの目に映ったのは、シンクの体から放たれる淡い光。
理解した瞬間、口から出たのは否定の言葉だった。

「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ!」
「どうしようもないよ、現実さ。僕はもうもたない」
「嫌だ!シンクが俺のもので、俺はシンクのだって言った!シンクが消えるなら俺も消える!俺がシンクのだって言うなら、連れて行けよ!!」
「ルーク、お前何言ってるんだよ」
「俺はルークじゃない!!」

ガイがルークを落ち着かせようと声をかけるが、ルークはそう叫び涙をたたえた瞳でガイを見た。

「俺は“ルーク”じゃない!なのに、何でルークって呼ぶんだ!シンクだけが俺に名前をくれた。違うって認めてくれた!俺はレンティスだ!!」

そう力の限り叫ぶと、ルークはシンクの体にすがりついた。

「お願い…置いていかないで…もう、おいていかれるのは嫌だよ…」

力なくうなだれるルークをシンクは立たせると、おぼつかない足取りで甲板の端まで歩いた。

「おい…何をする気だ」

アッシュが声をかけるが、シンクは答えない。
ただ、ルークに本当にいいの?とだけ聞く。
それにルークが頷くのを見て、笑みを浮かべた。

「…もらっていくから」

そういうのと同時に、二人の体が落ちる。
ガイが追いすがるように駆け寄るが、その手には何もつかめなかった。

「ルークー!!!!」

ただ、叫びだけが近くの中に飲み込まれて消えた。




☆シンルク心中(ぇ)
 いや、ちゃんとハッピーエンドですよ?
 次こそ万能ローレライ様の出番!
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質問です!
手に入れた居場所のシンクとルークの身長は公式の通りなのでしょうか?
何となくふとそう思ったのですが・・・
出来ればで良いのでお答えくださいm(__)m
2006/12/23(Sat)22:20:55 編集
Re:質問です!
書き込みありがとうございます。
手に入れた居場所のシンクとルークの身長は、本編中では一応、公式通りです。
まぁ、5cmしか変わらないみたいですが、おっきいこがちいさいこにべったりっというのがちょっとかわいいかと(笑)
番外編の方だと、シンクもルークも育ったって設定で。
シンクは成長してルークとほとんど変わらないぐらいに。でもイオンはほとんど変わってないような感じで。具体的な身長はご想像にお任せします。
【2006/12/25 12:54】
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