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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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バチカルにてナタリアと合流し、それからダアトへと向かうかつての自分たちの後ろを、ルークはふわふわとついて行った。
ジェイドに話しかけてみようとか思っていたが、慌しいこの状況と、このあとに起こる出来事が頭をかすめてルークはどうもそういうことができずにいた。

今の自分は未来の情報を有した第七音素と変わらない。
ただ情報を持っているだけで、自分からは何もできない、ただのかたまり。
だから、瘴気に当てられて倒れるティアの姿に手をかすこともできない。
ただ何もできないままふわふわとしている自分が歯がゆくて、ルークは幾度目かになるため息をついた。

未来から戻ってきても、自分の無力さばかりを痛感している気がする。
ローレライはこうなることをわかっていたのだろうか。
わかっていて、あえて自分を過去に戻したのだろうか。

どんどん鬱になって行く思考を引き戻したのは、イオンの部屋に慌しく入ってきたアニスの声だった。

「イオン様!大変なんです、早く来てください!」
『あ・・・』

慌しく出て行くイオンと、取り残されたかつての自分たち。
でも、ルークはこれが何の前触れか知っていた。
だからこそ、取り残されたかつての自分をおいて、アニスたちについて部屋を出て行った。
転送譜陣から発生した光に便乗して下へ向かう。
すると、アニスは既に待ちぶせていたリグレットらの横をすり抜けて、例のセフィロトへとつなぐ通路を走っていた。
自分の手を引いて走るアニスと待ち伏せているリグレットとを、イオンが不安げに交互に見つめる。
しかし、アニスの尋常でない様子を感じ取ったのか、激しい抵抗などせずただ手を引かれるままにイオンは走った。

ようやく足を止めることを許されたのは、隠し通路のある資料室までついてから。
アニスはここでモースを待つのだろう。
アニスとイオンしかいない空間に、異様な沈黙が流れる。

「アニス…どうして…」

アニスは決してイオンを見ようとはしない。けれど、イオンから声がかかった瞬間、その小さな体がびくりと震えた。
拳がきつく握られ、震えている。
ルークには、今のアニスの気持ちが痛いほどよくわかった。

どちらも大切なのに、どちらかを守るためにはどちらかを犠牲にしなくてはならない。
その痛いほどの苦悩。

戸惑い気味であったイオンだが、しばらくして入ってきたモースの姿を見ると、震えるアニスの姿をもう一度見て、全てを悟ったかのように瞳を閉じた。

「ご苦労だったなアニス。では、導師イオン、その先に進んで頂きましょう」
「イ…オン…さま」
「何も言わなくていいんですよ、アニス」

優しくイオンが笑うのを、アニスは潤んだ目で見つめていた。
そこへ、遅ればせながらかつての自分たちが到着する。
アニスのことも心配だが、先にモースに連れて行かれるイオンが気になって、自分も先に転送譜陣に入った。

・・・何もできないことはわかっているけれど、これを逃げないで見届けるのは、わがままを通すことを決めた自分の義務だと思うから・・・。



ザレッホ火山にやってきたイオンはすぐさま、譜石の前につれてこられた。
アニスもそのあとすぐに到着する。
その様子を見たモースは、厳しい口調で言った。

「譜陣の機能は停止したのだろうな?」
「はい・・・。モース様、約束です!パパとママを返して!」
「まだだ。導師に預言を詠ませてからだ。逃げられてはかなわんからな」
「そんな…!」

今にも泣きそうな様子のアニスに、イオンはいつもと同じように優しく微笑む。

「大丈夫ですよ。・・・モース、預言を詠めばオリバーたちを解放するのですね?」
「預言さえわかれば、そんな役に立たない奴に用はない」
「・・・わかりました」

イオンは静かに譜石へと手をかざす。
その姿にアニスは耐えられなくなって叫んだ。

「イオン様!それをしたら、イオン様が!!」
「いいんですよ、アニス。これで僕は、彼らを助けることができる」
「イオン・・・様?」

イオンはこんな状況にもかかわらず、嬉しそうに微笑んだ。
やがて、集中したイオンの口から淀みなくユリアの預言が読まれ始める。
アニスは見るに耐えないのか、涙を堪えて俯いた。
けれど、ルークはじっとその姿を見つめ続けた。
かつて自分たちを助けようとした、仲間の姿を。
その姿を目に焼き付けるように。

やがて、イオンの息があがり、預言を詠む声に疲れが見えてくる。
しかし、モースは止めないし、イオンもやめない。

本当は叫びたかった。
小さな体を支えてあげたかった。
けれどルークはそれを耐え、イオンを見つめ続ける。
やがて来たかつての自分が、倒れるイオンを支えるまで…。

「ルーク・・・これが・・・僕の見た預言・・・」
「イオン!しっかりしろよ!」
「・・・っ・・・ティア・・・手を・・・あなたの瘴気は・・・・僕がもらっていきます・・・」

光が・・・音素が乖離していく中、それでもイオンは笑っている。


なぁ、お前は本当に俺たちを最後まで助けてくれてたんだな。
最後くらい、泣いたっていいのに。
お前だって、死ぬの怖かっただろ・・・?
なのに、俺たちを助けられるからって、何もかも背負い込んで笑って・・・


イオンの姿を見て、堪えていた涙がルークの頬をつたった。


俺、最悪だ。
わがまま通して過去を変えるために戻ってきて、変えすぎると危険だからって理由を盾にして、またお前を助けないんだ。
一度目は間に合わなくても、今回は助けられたかもしれないのに。
俺は自分のわがままで、またお前を犠牲にするんだ。


『ごめん・・・イオンっ』

決して声にはならない声。
それでも、アニスへと向いていたはずのイオンの目が、その声に導かれるようにして自分を捕らえた。
驚愕に目を見開く。
すると、やっぱりイオンは微笑んだ。

「なかないで・・・僕の・・・大切な・・・」

最後までは聞き取れない。
それでも、イオンを形作っていた音素の欠片が近づいてきたのが見えた。
ルークはそれに思わず手を伸ばす。
手が触れるか、触れないかというとき、透けていた自分の手が実体を持った。
驚いて手を見ると、その手はまたいつものとおり半透明なものに戻る。

夢かとも思われる一瞬。
しかし、その一瞬をルークは体で覚えていた。


イオン・・・おまえ・・・ほんとに・・・


ルークの頬をまた新たな涙がつたう。
誰にも見られることのない涙は、静かに流れ空気に溶け込んだ。







☆すみません、イオン様のとこうろ覚えですorz
 しかも、アニスに向けられたであろう言葉を、勝手にルークに向けられた言葉にしてしまいました。
 そしてさらに、わかりにくいですが、イオンのおかげでルークは自由に実体化する方法を体得しました。
 これでようやくまともに誰かと会話できそうです。
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