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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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テオルの森から引き上げてきたアッシュたちは、合流したジェイドにルークからの言葉を伝え、渡された本を見せた。

「高まる揺れは地を飲み込む…ですか」
「大佐、何かわかったのですか?」

本に簡単に目を通した後、ため息をついたジェイドにティアは声をかけ、その様子をアッシュが眉をひそめて見守っていた。

ガイが倒れたことで、ナタリアとアニス、イオンと別れ、アッシュとティアは現在、城内にいた。

「…まだ、簡単に目を通しただけですので詳しいことは言えません。明日にでも…」
「明日ですか…ガイの様子も気になりますし、そのほうがいいかもしれません」
「それで構いませんか?アッシュ」
「ああ…」
「では、陛下が部屋を用意してくださいましたから、ここで休んでください」

ジェイドに促されるまま、アッシュは豪勢な客間へと足を踏み入れる。
ベッドはやわらかく疲れた体を包むが、アッシュの心は混乱したままであった。
事態は一刻を争うものばかりなのに、手足を動かせど前には進めない。

…クソッ

アッシュは心の中で悪態をつくと、眠れないのはわかってはいたがベッドの上で瞳を閉じた。



翌日、一行はピオニー陛下のもとを訪れる前に、ガイのいる宿屋に来ていた。
ガイの体調は完全に回復してはいたが、そこにいる一同の表情は重い。
それは、イオンが“根底に殺したいほど憎いという思いがなければ、操られているといっても人を傷つけることはできない”といったためだ。
そして、ジェイドより聞かされたガイの身の上…。
アッシュはヴァンから聞かされていたために、ガイが自分を…ファブレ家を憎んでいたことは知っている。
しかし、それを知らなかったナタリアたちの驚愕は大きかった。

「では…ガイは復讐のために今までファブレ公爵のもとに…?」

ナタリアが信じられないというように呟やくのを聞き、ガイは笑みを浮かべる。

「そうだ。家族を奪われた苦しみを公爵にも味あわせてやるつもりだった」
「…だった?」
「ああ、あいつが…ルークが来るまではな」

ここでガイが言う“ルーク”はアッシュを指していないことは、誰もがわかった。
やがて、ガイはゆっくりと瞳を閉じて昔を懐かしむように話し始めた。

「…全部俺が教えたんだ。歩き方も言葉も…全部」
「自分の敵の息子に情が湧きましたか?」
「…ま、俺が育てたからってわけでもないさ。あいつさ、過去なくて辛くないかって聞いたら、過去ばかり気にしてても前に進めないって言ったんだ」
「……」
「やっと言葉覚えたばかりの、今にして思えば2、3歳のガキがだぜ?…打ちのめされた気がしたよ。だから…あいつがどう育つか見ることにしたんだ。もし、あいつが俺の忠誠心を刺激するような人間になったら、諦めようってな」

ガイは再び瞳を開けると、まっすぐにアッシュを見た。

「…俺にとって大切なのはあいつだ」
「言われなくても、知っている」
「俺はあいつを取り戻す。それまでは…」
「わかっている」

アッシュはそういうと、身を翻して部屋を出て行った。
ガイもその後を追って部屋を出て行った。
残ったのは重苦しい雰囲気。
ティアは、傲慢でわがままのようにしか見ていなかった彼の…ルークの存在が大きかったことに改めて気づかされた。



一方アッシュたちから離れたルークたちは、ローテルロー橋にいた。

「ねぇ、どうしてあの時止めたの?」
「あの時?」

シンクの問いに、ルークは目を丸くして首をかしげる。

「ガイって奴をカースロットで動かしてたとき。僕を止めただろう?」
「あれは…」
「前の仲間が傷つくのはいや?それとも戻りたいの?」
「違う!!」

シンクの言葉に、ルークは激しく首を振った。
たしかに、あの時ルークはシンクの名前を呼ぶことで、制止をした。
でもそれは、決してシンクがいうような理由からではない。
…まぁ、一番仲良かったガイが苦しんでるのが見ていられなかったというのも全くないわけではないが、一番の理由は…

「…だって、アレってダアト式譜術ってやつなんだろ?アレ使ってたら…シンクもイオンみたいに…」

そのルークの言葉に、今度はシンクが目を丸くした。
ルークはイオンが譜術を使い、倒れるのを見ている。
だからこそ、それを使うことでシンクにも影響があるのではないかと考えたのだ。
そのルークの心配を知ったシンクは、胸に浮かぶ暖かな思いに戸惑い、ルークから顔を逸らした。

「ぼ、僕は譜術力が劣化してるんだ。少し使ったくらいで、倒れたりしないよ!」
「そっか…良かった。あ、良かったって言うのは力が弱くなってるって言うことじゃなくて…!」

しどろもどろに弁解をするルークと、どこか照れている様子のシンク。
ラルゴはどうするべきか悩みながらも、微笑ましくその様子を見守っていた。

「…む。シンク、レンティス。船が来たぞ」
「あ、あぁ」

ようやく我に返った二人が、こちらに近づいてくる船を見た。
神託の盾でも、キムラスカでもマルクトの船でもない、小さな船。

アッシュたちも…ヴァンですら知らぬところで、シンクたちの計画は着々と進んでいた。



☆このとき…橋って壊れてたのかな・・・?
 多分いろいろおかしいですが、見逃してください。
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テオルの森。

足止めをくってしまい、仕方なしにジェイドを待っていた一行だったが、マルクト兵の悲鳴を聞き、森の中へ足を踏み入れていた。
しかし、駆けつけた先にいたのは予想もしない人物だった。

「ルーク!」

森の真ん中に映える赤。
その姿を認めたガイは真っ先にルークに駆け寄ろうとした。

「来るな!」

ルークの鋭い制止に、ガイは思わず足を止める。

「何でだよ、ルーク。俺たちのところに戻ってきたんじゃないのか?」
「違う。伝えに来ただけだ」
「…何をだ」

追いついてきたアッシュがガイの隣に立ち、ルークをまっすぐに見つめて尋ねる。
ルークはその視線にひるむことなく、口を開いた。

「かつて地にあったものは地に返る。高まる揺れは地を飲み込む。破滅は新たな世界の幕開けとなり、唯一残された前世界の技術が新世界を創造する」
「…何を言っている?」

戸惑うアッシュルークは手に持っていたものを投げる。
それは古ぼけた一冊の本だった。
用は済んだとばかりにきびすを返すルークの手を、ガイが掴む。

「どこに行くんだ!?」
「離せ…っ!」
「何でだ、ルーク!何で…!?」
「その手を離してよね」

突如、振ってきた声。
その瞬間、ガイが苦しそうにうめいて膝をついた。
その腕に、一瞬何かが浮かび上がったのを、イオンは見逃さなかった。

「カースロットです!」
「ならば…」

術者であるシンクの声がしたほうに、ナタリアが弓をいろうとするが、それを黒い影が邪魔をする。

「ナタリア、危ない!」

ナタリアはティアの声に咄嗟に反応し、襲ってきたものから身を守った。

「なかなかいい反応だな、姫」
「あなたは…!」
「ラルゴ!」

ナタリアとラルゴの間に割って入ったアッシュは、ラルゴに剣を向けながら睨みつけた。

「随分とゆっくりした旅だな、アッシュ。そんなことでは、ヴァンの計画を阻止するなど叶わんぞ」
「何だと…!?」
「言葉どおりだ」
「…そういうお前たちは、何のためにここにいる!」

アッシュの問いに、ラルゴは笑みを浮かべる。

「俺は、俺の目的のためにいる。それだけだ」
「ラルゴ、行こう」
「わかった」

ルークに誘われるまま、ラルゴはその場を去る。

「待て…!まだ話は終わってない!!」

謎なことばかりを投げかけられ、いらだっているアッシュはとっさに剣を抜き、ラルゴたちを止めようと走るが、後ろから突きつけられた殺気に身を翻す。
その瞬間、ガイが振るった剣がアッシュの横を通り過ぎた。

「ガイ!?」
「ガイ、しっかりして!」

アッシュの驚きの声、そして、ティアの制止の声がかかるが、ガイは苦悶の表情を浮かべてはいるものの正気には返らない。

「シンク!」

ルークの声が響く。
すると、ガイの体は今までのことが嘘のように地面に崩れ落ちた。
ガイが崩れ落ちるのと同時に、木の上から降りてくる小柄な影。
ルークはそれを見つけると、駆け寄った。
そして、シンクの横が自分の居場所だというように並ぶ。

「ルー…ク…」

ガイがわずかに残った意識で、ルークの名を呼ぶ。
その声に、ルークは少し苦しげに眉を寄せた。
しかしそれは一瞬のことで、強い意志を宿した目でガイを見た。

「俺はルークじゃない。レンティスだ」

その言葉にもう誰もルークを引き止められなかった。
三人が去った後で、残ったのは一冊の古い本。
アッシュはその本を強く握り締めた。
「シンク…ごめん」

残っていろといわれていたのにでてきた挙句、顔も見られて戦況をかき回してしまったルークは、部屋に帰ってきて一番に頭を下げた。
怒られるとか、呆れられるとか、また捨てられるとか…嫌な方向にばかり考えが回り、怖くて顔が上げられない。
しかし、頭の上に降ってきた声は意外なものだった。

「謝ることないよ。むしろこれで動きやすくなった」
「え?」
「どういうことだ、シンク?」

不信そうなラルゴにシンクは笑う。

「ねぇ、ラルゴ。アンタだってヴァンの計画にこころから賛成してるわけじゃないだろ?」
「…何を…」
「ヴァンしか預言を覆そうとするやつが…いや、覆せそうな奴がいなかったからヴァンについた。違う?」

ラルゴは言葉を詰まらせる。
確かに、シンクの言ったとおりであった。
預言は憎い。しかし、ヴァンの計画は極端なものであった。
心底それに賛成することはできない…しかし、預言に支配された世界が存続され続けるぐらいなら、とヴァンの手をとった。
だが、なぜ今更それをシンクが言うのか。
シンクはこの世界にも自分にも意味などないと言ってはいなかったか?

シンクはそんなラルゴの思いに気づいたかのように笑って言った。

「ちょっと気が変わったんだ。ねぇラルゴ…預言に支配されない世界じゃなくて、預言が消え去った世界を見たくない?」
「預言が消え去った世界…」
「そう。預言がなくて焦る人間たち…見たくない?」
「しかしどうやって…」
「預言に縛られてない存在がいるじゃない」

シンクの口元に浮かぶ笑みを見て、ラルゴは理解した。
シンクから視線を逸らすと、ルークをまっすぐに見る。

ヴァンによって作られたアッシュの…いや、“ルーク”の完全同位体。
アクゼリュスで預言を覆すための道具として、あそこで滅ぶはずだった。
しかし、彼はそれすらも覆し、生き残った。
預言を捻じ曲げたのだ。
預言が絶対とされたこの世界では、そのわずかな差がとても大きなものとなる。

「な…何?」

じっと見つめられ、居心地悪げにルークが眉をひそめる。
不安げに見上げる彼の瞳が、小さな子どもそのもので、ラルゴはつい彼の頭を撫でてしまう。
ラルゴの行動に戸惑いの視線を向けるものの、心地が良いのかルークは大人しくそれを受ける。

「シンク」
「何?」
「話に乗ってやる」



「どういうことだ!?」

第四譜石の丘まで何とか逃げてきたところで、アッシュは怒りを露にして叫んだ。
しかし、その問いに答えられる人間などいない。

「…あの様子では…ルークは自分からシンクたちに従っているようね」
「俺みたいに、カースロットで操られてるってわけじゃ…」
「それはありえません。カースロットで操ったものは人形のようなもの。会話や思考は持ちえませんから」
「じゃぁ…やっぱりルークは…」

ガイは悔しそうに唇を噛んで俯いた。
皆が言葉をなくす中、ジェイドは一つため息をついた。

「……全く……問題ばかり起こす子どもですね」
「…なんだと?」
「言葉どおりですよ。彼は問題しか起こさない。まぁ、もう敵なのなら関係ありませんが」
「テメェ…!」
「ガイ!ジェイドも!やめてください!」

ジェイドの胸倉を掴みあげ、睨みつけているガイをイオンが制止する。
しかし、ガイはジェイドから手を離さない。

「ジェイド。ルークの行動は彼の責任ばかりではありません。少なからず、僕らにも咎はある」
「…まぁ、そうですね。否定はしません」
「ならば、僕らは僕らの罪を償うべきです」

ガイはイオンのその言葉を聞いて、ようやくジェイドを掴んでいた手を離した。

「けれど…どのようにして償えばよいのかしら…」
「…とにかく、セントビナー崩落の阻止だ」
「ご主人様をまた見捨てるんですの!?」
「屑がシンクと行動するなら、必ずまた姿を現す。その時に嫌でも連れ戻せばいいだけだ」
「アッシュ…お前、ルークが憎いんじゃないのか?」

アッシュの言葉にガイは目を見開く。
その明らかに意外だというガイの様子に、アッシュは眉間の皺を更に深くする。

「あの野郎がこれ以上利用されても面倒だ」
「…何でもいい。ルークを連れ戻すためなら、気に入らないが協力してやるさ」

ガイと少しの間睨むように視線を交わした後、アッシュはその視線をジェイドに向ける。

「グランコクマにいく。ジェイド、案内しろ」
「はいはい…わかりましたよ」


双方は別の道を歩み始める。
その先は一つか…あるいは…

ミュウにしがみつかれたルークは、冷静さを何とか保とうとはしていたが内心かなり焦っていた。
まぁ、仮面をつけただけで隠し通せるとは思っていなかったが、髪も短くなっているし、声も出さなければばれることはないと考えていたのだ。
長い髪というのは結構先入観があるし、それが短くなっただけで印象はだいぶ変わる。
それに、自分がユリアシティからもどってきていることはまだ知られてないはずだと思っていたのだ。
ティアとミュウがここにきていたのは、ルークにとって予想外の出来事だった。

しかし…あのブタザルにあっさりと見破れるほどの能力があったとは、意外だ。

嬉しいような…面倒なような…複雑な感情がルークの中で混ざり合う。
しかし、いつまでも動かないでいては肯定しているようなものなので、とりあえず剣を持っていない右手でミュウを掴むと、ティアに向かって投げつけた。
ここで、目の前のアッシュに投げなかったのは、弾き飛ばされでもしたら哀れだという、ルークの最大限の譲歩だったりする。

「お前…本当にルークなのか?」

呆然と呟いたのは、ガイ。
その信じられないというような声音に、ルークは仮面の下で顔をゆがめた。

ガイは好きだった。
別に、甘やかしてくれるだとかそんなのではなくて、あの閉じ込められた世界では唯一の友達だったから。


でも…
お前も結局、被験体と一緒にいるだろう?
俺、レプリカだから用無しだろ?


無意識のうちに、剣を握る手に力が入る。
そして、未練を断ち切るように剣を真横に凪ぎ払った。

「おもしれぇ…その仮面外せば、テメェが誰かなんてはっきりする!」
「…っ!」

アッシュが好戦的に繰り出してくる剣を、ルークは受け止め、時に攻めに転じる。
しかし、同じ技を学んだ者同士。苦手なところはすぐにわかる。
となれば、勝敗を左右してくるのは実戦経験の差だった。

「遅い!」

ほんの少し体勢を崩し、それを立て直そうとしたときには近づいてきていた剣先。
まずい、と思ったとき強い力で後ろに引っ張られた。
途端、頭の上を通り過ぎていくのは巨大な鎌。

「俺たちを忘れてもらっては困る」
「クソッ」

シンクがルークをひっぱっり、ラルゴがアッシュを遠ざけた。
その結果、また状況は振り出し。
いつまでもこうしてても埒があかない。
双方が焦れ始めたとき、こんな狭い場所で術を使うわけにもいかず、状況を見守っていたジェイドが口を開いた。

「おやおや、六神将が子どものお守りですか。よほど利用価値があるのでしょうねぇ」

明らかに挑発しているとわかる、人を小ばかにした様な口調。
それが、ルークを誘い出すための言葉だということは、流石のルークにもわかった。
だから、ぐっと堪えて無関心を装う。

でも…
胸が痛い

「そんなおしゃべりする暇があるなんて、たいそう余裕だね、ネクロマンサー殿は」
「そちらこそ、被験体が手を離れたとわかった途端、レプリカを確保するとは早い行動ですね。感服しますよ」
「ジェイド!」

ルークを誘い出すためだといっても、あまりな言葉にガイがジェイドをいさめる。
しかし、ジェイドはやめない。

「それとも、初めからそちらのお仲間だったんですかねぇ」

言葉の棘に、重さに思考が停止する。
だから、矢が自分を狙って飛んできたとき、とっさに反応が遅れた。


仮面が音をたてて床に転がる。


気づいて腕で顔を覆うも、既に手遅れだった。
決定的なものが、眼前にさらされる。

「ルーク!」
「…なんでテメェがそこにいやがる!レプリカ!」

ルークは諦めたように手を下ろすと、あえて無表情をつくりかつての仲間を見た。

「うっそ!アンタ本当に裏切ったの!?サイテー!!」
「アニス!」
「だって、イオン様!アレってそういうことでしょ?」


無意識に握る手に力が入る。


裏切った…?
誰が、何を?

「……仲間なんて思って無かったくせに」

小さな一言は、その場に大きく響いた。

「何…言ってんだよ、ルーク」

ガイがルークを呼ぶ。
その声はかすれており、どこか不安げに聞こえた。
ガイに対して罪悪感を抱かなくはないが、先程の言葉はルークの今の気持ちだった。
今までは辛くて、苦しくて言えなかった事。
せき止めていたものが壊れてあふれ出した。

「裏切った?そんなの、ありえない。最初から仲間なんかじゃなかっただろ!?お前らは“ルーク・フォン・ファブレ”を利用してただけだ!仲間として欲しかったのは俺じゃない。“ルーク”だろ!」
「あなた、何を言ってるの!?私たちは!」
「じゃあ、何で…っ」


「仲間だって言うなら、なんで俺を置いていったんだよ!何で捨てたんだよ!そんなの…いらないってことじゃないか!!」


ルークをいさめようとしたティアも、ルークの叫びに言葉を失う。
ティアだけではない。
ガイもアッシュも…ジェイドやアニスですら何もいえないでいた。
そんな皆の様子に気づかないのか、ルークがなおも言葉を続けようとしたとき、今まで黙って成り行きをみていたシンクがルークを止めた。

「レンティス。これ以上こいつらに構う必要はない。帰るよ」
「シンク……わかった」

少し不満そうではあるが、ルークはシンクの言葉に大人しく頷く。
しかし、納得できないのはアッシュたちのほうだ。

「まて!そいつにはまだ用がある」
「アンタからそんな言葉を聞くとはね。アッシュ…いや、ルークかな。自分の居場所がもどってきたんだから、もうレプリカなんかに用はないでしょ。それとも例えレプリカでも捨てたら惜しくなった?」
「何だと!?」

アッシュの怒声にも、シンクは薄く微笑むだけ。
ラルゴとルークを伴って、アッシュたちに背を向けた。

「…あんたたちはせいぜい、ヴァンの手のひらで踊ってるといいよ」

その言葉に、アッシュは悔しげに唇を噛んだ。


自分の知らないところで回り続けている歯車の音を聞いた気がした。



☆・・・好きな子ほど苛めたく・・・なりません?(ぇ)
「見つかったようですねぇ」
「ちっ…簡単にはいかねぇか」

イオンとナタリアを救出するためにダアトの神託の盾本部まで乗り込み、無事に合流したまではよかったものの、どうやら連れ出したのがばれたらしい。
今まではアッシュの威光で比較的楽に進めていたのが一変。
多くの神託の盾兵に追われることとなった。

「あーもう、サイアクー!!」
「急いでここを出るしかないわ」

ここで議論をしている暇はない。
本部だけあって、兵は山ほどいる。足止めをくってしまえばその分状況は悪化していく。
それに、下手をすれば六神将もでてきかねない。
戦闘を地理に詳しいアッシュとアニスが行き、その後をティアとナタリア、イオン。そして、後ろをジェイドとガイが守りながら進む。
出口まであと少しというところで、一番会いたくない人物の声が響いた。

「止まれ」
「シンク…ラルゴ…ッ!」

目の前に立ちふさがった人物を、アッシュは睨みつけた。
この二人が一筋縄では行かない相手だということは、一緒にいたアッシュが一番良く知っている。
しかし、退こうにもこの二人が見逃してくれるわけはない。
アッシュは剣を抜くと、臨戦態勢をとった。

「…退け」
「退くわけないでしょ。そっちこそ、導師を渡してもらおうか」
「渡せるわけないでしょ!イオン様を利用なんてさせないんだから!」
「そうですわ!私たちは戦争を止めなくてはならないのです!」
「ならば、力ずくで奪うのみ」
「覚悟してもらうよ」

ギィンといやな音をたてて、刃が合わさった。



「…遅いな…」

シンクたちが出て行って既に30分。
悲鳴とかはおさまったけれど、まだ慌しいのは変わらない。
時間がたてばたつほど不安がつのる。
アッシュたちに会うのは怖い。
でも、居場所をくれたシンクがいなくなるのは、ルークにとって一番の恐怖だった。

利用されているのかもしれないと、考えたこともある。
でも、例え利用されていたとしても…もう構わないと思った。
最期までシンクと一緒に行くと決めたのだ。

部屋を見回すと、シンクがつけてある予備のものと思われる仮面があるのが見えた。
ルークはしばらくそれを眺めていたが、やがて意を決したように立ち上がり、部屋を出て行った。



「ちっ…流石、鮮血のアッシュ。なかなかやるね」
「ふんっ」

状況はあまりよくなかった。
同じ六神将であり、実力が互角のアッシュが敵側にいるというのが、予想以上に戦況を狂わせた。
イオンを傷つけるわけにはいかないため一般の神託の盾は下がらせてある。
故に、事実上二人でアッシュたちを相手にせねばならなかった。
多勢に無勢。
シンクは憎々しげに舌打ちをした。

「ほら!隙だらけだ!」

一瞬の気の緩み。
それを見逃すアッシュではなかった。
とっさに身を守るものの、それ相応の衝撃は覚悟する。
しかし、訪れたのは剣の衝撃ではなく、目が覚めるような赤。
大きな金属音とともにアッシュの剣が受け止められる。
それを見て、シンクは仮面の奥で大きく目を見開いた。
驚いたのはアッシュも同じようで、一瞬、剣に込めた力が緩んだ。
そこをラルゴの鎌が狙い、アッシュは後ろに飛退く。
言葉を発することなく、剣を構えている乱入者に、アッシュは叫んだ。

「貴様、何者だ!」
「……」

シンクと対のような姿。
仮面に隠された顔は見ることができず、どこか異様な雰囲気を感じさせる。
こんな人物を、アッシュは知らない。

「…来たの?」
「……ごめん」
「いいよ、そのまま黙ってて」

小さな声でのやり取りは、アッシュたちには聞こえない。
ラルゴはその様子をちらりと見たが、再び警戒するように前方を見据えた。

「これが誰でもアンタにはもう関係のないことだよ、アッシュ」
「何?」
「敵のことなんて、知らなくていいってことさ。それより、十分余裕だね。居場所を取り戻して、気でも緩んだ?」
「黙れ!」

再びアッシュがシンクに斬りかかった時、再び先程の赤が割って入った。

「邪魔を…するなぁ!目障りなんだよ!!」

剣を振り下ろそうとしたとき、小さな蒼が横切った。

「ご主人様!」
「ミュウ!危ない!」

アッシュの一撃を受け流そうと動いていた赤は、とっさに動きを変え、その剣を真っ向から受け止めた。
赤の足元には、すがりつく小さな生き物。

「ご主人様ですの!ミュウにはわかるですの!ご主人様ですの!!」

その言葉に、空気が止まった。

まさか…

「ルーク!?」

叫んだのはティアだったか…ガイだったか。
アッシュの剣を退けた赤は、対照的な緑の横に悠然と咲いていた。



☆アクゼリュスでのミュウには泣けました。
 よってここでもちょっと活躍。
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