TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。
出版元・製作元様方には一切関係ありません。
また、突然消失の可能性があります。
嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
×
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「ごめん…シンク」
しゅんとうなだれた様子でルークはシンクを見つめる。
タタル渓谷でシンクはアッシュたちに会うなどこれっぽっちも考えていなかった。
むしろ、これ以上会うことはあの察しのいい死霊使いにもヴァンにも自分たちの目的がばれかねないので、控えておこうと話したばかりだった。
シンクは思わず出そうになるため息をぐっと堪えた。
会ってしまったものは仕方がない。どこかで感づかれようとも最終的に目的が達せられればいいのだ。
「…あいつら、ちゃんと動いてるみたいだね。この分なら、一週間もあれば上手くいくかもしれない」
「え?そっか…上手くいくかな…」
「ヴァン次第だね」
「…師匠…」
ルークはぐっと拳を握った。
そして、迷いを振り切るように一度瞳を閉じてぐっと前を見た。
…もう迷うわけにはいかないのだ。
あなたが俺を裏切り捨てた。なら…今度は俺があなたを…
「タルタロスは今日中には仕上がる。その後はアルビオールをタルタロスにのせてアグゼリュス崩落後から地核に下りる」
「譜術障壁は大量なエネルギーを消費する。だから、チャンスは一回きりじゃ」
「今のうちに行きたいところ、やりたいところに行って来るといい」
振動測定器を持ち帰った面々は、シェリダンの集会所にて今後の作戦の説明を受けていた。
チャンスは一度きり…その失敗が許されないという言葉に、全員が表情を引き締める。
「そっかぁ…作戦始まったらアルビオールも使えないんだね…」
「アルビオールがなきゃ、こっちに帰ってこれんからのぅ…脱出時はタルタロスに書いてある譜陣の上昇気流を利用して戻ってくるんじゃ」
「…一応準備は整っています。明日までは自由行動としましょう」
全員が思い思いにどこかへ出かけていく。
ガイはイエモンらとドッグの方へ…
ティアはミュウと海のほうへ
アニスはイオンと
ジェイドも早々にどこかへ歩いていった。
残ったのはアッシュとナタリア。
お互いに、言葉はなかった。
海の見える広場まで出て、そこから海を見下ろす。
「……ルー……アッシュ、あのときの約束を覚えていまして?」
「…死ぬまで一緒にいてこの世界を変えよう…か」
「ルーク…!」
「今の俺はルークじゃねぇ」
「いいえ…!いいえ!!あなたは…!」
「じゃぁお前は“あいつ”は何だというんだ?」
その言葉に、ナタリアは息をのんだ。
アッシュがルークなら、ルークは何?
今更ながらに突きつけられた事実。
ナタリアはそれにとっさに答えることができなかった。
アッシュはアッシュ、ルークはルークだと頭ではわかっているはずなのに…。
アッシュ自身も自分が発した言葉が信じられない思いだった。
自分は確かにレプリカを恨んでいた…そのはずだったのに。
アッシュは舌打ちをするとその場から立ち去る。
転機を迎えようとしている世界を、夕日だけがいつもと同じように照らしていた。
まだ薄暗い中、シェリダンへと向かう者たちがいた。
近くの海岸に停泊した船の中から落りてきたのは、神託の盾の兵士。
その最後尾には二つの人影。
「シェリダンを包囲しろ。夜明けとともに襲撃。アッシュを拘束しろ」
「閣下。他の奴らは…」
「…メシュティアリカとガイラルディア、導師は拘束。後は始末して構わない」
「了解いたしました」
命令を達成するためにかけていくリグレットを見送り、ヴァンは薄く笑みを浮かべた。
「役に立たないレプリカ風情が、私をあざむこうなど…愚かな」
シンクが影で動いていることなど、ヴァンにはわかってきた。
屑のレプリカが集まったとて何かできるわけではないだろうと黙認していたが、予想以上に厄介なことをしでかしてくれた。
シンクやラルゴはまだ利用価値があると思っていたが、仕方がない。
「計画を邪魔するものは誰であろうと消えてもらう」
「シンク、起きろ!!」
ラルゴの鬼気迫った声に、シンクは目を覚ました。
辺りを見回すとシェリダンの周りを不穏な空気が取り囲んでいた。
「ヴァンが動いたか…」
「レンティス、起きろ」
「ん…ラルゴ?」
「事情が変わった…急ぐぞ」
「…うん」
寝起きながらも、嫌な空気を感じ取ったのかすぐに立ち上がった。
「ラルゴは街に行って、守りが薄い出口を一個作って。後はキムラスカに伝令を」
「わかった」
「レンティスは僕と港に行くよ。タルタロスを確保しておかないと、どうにもならない」
「わかった。…ラルゴ、気をつけてな」
「あぁ。お前もな」
まだ薄暗いあたりに紛れて、三人は走り出した。
「皆さん、起きてください!」
「さっさとしろ!殺されてぇのか!?」
怒声により起こされた一同が目にしたのは、シェリダンを囲む神託の盾兵。
そこへイエモンが走ってきた。
「神託の盾の連中が攻めてきておる!このままでは…。わしらがここを抑える!お主たちは港へ向かえ!」
「でも…!民を放っては!!」
「ここで捕まっては全てが無駄になる!行くんじゃ!!」
「そうよ、ナタリア。私たちは私たちにしかできないことをしなくては」
「わかりました…どうか、御無事で!」
迷いを振り切るように走り出すが、その足元を銃弾が穿つ。
「行かせるわけにはいかない。閣下の邪魔をするものは、誰であろうと許さない」
「教官!」
「テメェに用はねぇ!どけ!!」
アッシュの剣がリグレットを狙い、わずかに気が緩んだところをティアのナイフが襲う。
しかし、そのナイフもすんでのところでかわされてしまう。
「甘いと言ったはずだ、ティア!」
「くっ…」
「今じゃ、タマラ!」
「はいよ!」
にらみ合いの状態だったところに、火炎放射器がリグレットめがけて放たれる。さすがにこれはリグレットも逃げるしかなかった。
その隙に、アッシュたちは人々に導かれ、手薄なところから町を出て、港へと向かった。
街では悲鳴怒号が飛び交っている。
ナタリアは苦しそうに顔をゆがめ、港に向かって走った。
人々の必死の後押しを受けて立ち止まるわけにはいかないから。
港に着くと、シェリダンの町とは打って変わって、静寂が辺りを包んでいた。
それに、なにやら白い霧のようなものが港全体を覆っている。
首をかしげる一同に、何かに気づいたジェイドが声を上げた。
「これは…伏せなさい!睡眠煙幕です!」
「何!?何とかならねぇのか!?」
「譜術で吹き飛ばします!」
ジェイドの譜術によって視界が良くなると、あちこちに神託の盾兵が倒れているのが見えた。
「これは…シェリダンの人たちがやったみたいだな」
あたりを一通り見回し、起きている人間がいないか確かめていると、今まで隠れていたのか、アストンらが倉庫の影から姿をあらわした。
「おお、あんたたちか!早く!追っ手が来る前にタルタロスに乗り込むんじゃ!」
「わしらの最高傑作だ。頼んだぞい」
「はい。必ず成功させて見せますわ!」
アストンらにせかされてタルタロスに乗り込む。
そして、リグレットらが追いつく前にタルタロスは港を離れた…。
これで安心して地核を静止できる。
…そう思っていた。
しゅんとうなだれた様子でルークはシンクを見つめる。
タタル渓谷でシンクはアッシュたちに会うなどこれっぽっちも考えていなかった。
むしろ、これ以上会うことはあの察しのいい死霊使いにもヴァンにも自分たちの目的がばれかねないので、控えておこうと話したばかりだった。
シンクは思わず出そうになるため息をぐっと堪えた。
会ってしまったものは仕方がない。どこかで感づかれようとも最終的に目的が達せられればいいのだ。
「…あいつら、ちゃんと動いてるみたいだね。この分なら、一週間もあれば上手くいくかもしれない」
「え?そっか…上手くいくかな…」
「ヴァン次第だね」
「…師匠…」
ルークはぐっと拳を握った。
そして、迷いを振り切るように一度瞳を閉じてぐっと前を見た。
…もう迷うわけにはいかないのだ。
あなたが俺を裏切り捨てた。なら…今度は俺があなたを…
「タルタロスは今日中には仕上がる。その後はアルビオールをタルタロスにのせてアグゼリュス崩落後から地核に下りる」
「譜術障壁は大量なエネルギーを消費する。だから、チャンスは一回きりじゃ」
「今のうちに行きたいところ、やりたいところに行って来るといい」
振動測定器を持ち帰った面々は、シェリダンの集会所にて今後の作戦の説明を受けていた。
チャンスは一度きり…その失敗が許されないという言葉に、全員が表情を引き締める。
「そっかぁ…作戦始まったらアルビオールも使えないんだね…」
「アルビオールがなきゃ、こっちに帰ってこれんからのぅ…脱出時はタルタロスに書いてある譜陣の上昇気流を利用して戻ってくるんじゃ」
「…一応準備は整っています。明日までは自由行動としましょう」
全員が思い思いにどこかへ出かけていく。
ガイはイエモンらとドッグの方へ…
ティアはミュウと海のほうへ
アニスはイオンと
ジェイドも早々にどこかへ歩いていった。
残ったのはアッシュとナタリア。
お互いに、言葉はなかった。
海の見える広場まで出て、そこから海を見下ろす。
「……ルー……アッシュ、あのときの約束を覚えていまして?」
「…死ぬまで一緒にいてこの世界を変えよう…か」
「ルーク…!」
「今の俺はルークじゃねぇ」
「いいえ…!いいえ!!あなたは…!」
「じゃぁお前は“あいつ”は何だというんだ?」
その言葉に、ナタリアは息をのんだ。
アッシュがルークなら、ルークは何?
今更ながらに突きつけられた事実。
ナタリアはそれにとっさに答えることができなかった。
アッシュはアッシュ、ルークはルークだと頭ではわかっているはずなのに…。
アッシュ自身も自分が発した言葉が信じられない思いだった。
自分は確かにレプリカを恨んでいた…そのはずだったのに。
アッシュは舌打ちをするとその場から立ち去る。
転機を迎えようとしている世界を、夕日だけがいつもと同じように照らしていた。
まだ薄暗い中、シェリダンへと向かう者たちがいた。
近くの海岸に停泊した船の中から落りてきたのは、神託の盾の兵士。
その最後尾には二つの人影。
「シェリダンを包囲しろ。夜明けとともに襲撃。アッシュを拘束しろ」
「閣下。他の奴らは…」
「…メシュティアリカとガイラルディア、導師は拘束。後は始末して構わない」
「了解いたしました」
命令を達成するためにかけていくリグレットを見送り、ヴァンは薄く笑みを浮かべた。
「役に立たないレプリカ風情が、私をあざむこうなど…愚かな」
シンクが影で動いていることなど、ヴァンにはわかってきた。
屑のレプリカが集まったとて何かできるわけではないだろうと黙認していたが、予想以上に厄介なことをしでかしてくれた。
シンクやラルゴはまだ利用価値があると思っていたが、仕方がない。
「計画を邪魔するものは誰であろうと消えてもらう」
「シンク、起きろ!!」
ラルゴの鬼気迫った声に、シンクは目を覚ました。
辺りを見回すとシェリダンの周りを不穏な空気が取り囲んでいた。
「ヴァンが動いたか…」
「レンティス、起きろ」
「ん…ラルゴ?」
「事情が変わった…急ぐぞ」
「…うん」
寝起きながらも、嫌な空気を感じ取ったのかすぐに立ち上がった。
「ラルゴは街に行って、守りが薄い出口を一個作って。後はキムラスカに伝令を」
「わかった」
「レンティスは僕と港に行くよ。タルタロスを確保しておかないと、どうにもならない」
「わかった。…ラルゴ、気をつけてな」
「あぁ。お前もな」
まだ薄暗いあたりに紛れて、三人は走り出した。
「皆さん、起きてください!」
「さっさとしろ!殺されてぇのか!?」
怒声により起こされた一同が目にしたのは、シェリダンを囲む神託の盾兵。
そこへイエモンが走ってきた。
「神託の盾の連中が攻めてきておる!このままでは…。わしらがここを抑える!お主たちは港へ向かえ!」
「でも…!民を放っては!!」
「ここで捕まっては全てが無駄になる!行くんじゃ!!」
「そうよ、ナタリア。私たちは私たちにしかできないことをしなくては」
「わかりました…どうか、御無事で!」
迷いを振り切るように走り出すが、その足元を銃弾が穿つ。
「行かせるわけにはいかない。閣下の邪魔をするものは、誰であろうと許さない」
「教官!」
「テメェに用はねぇ!どけ!!」
アッシュの剣がリグレットを狙い、わずかに気が緩んだところをティアのナイフが襲う。
しかし、そのナイフもすんでのところでかわされてしまう。
「甘いと言ったはずだ、ティア!」
「くっ…」
「今じゃ、タマラ!」
「はいよ!」
にらみ合いの状態だったところに、火炎放射器がリグレットめがけて放たれる。さすがにこれはリグレットも逃げるしかなかった。
その隙に、アッシュたちは人々に導かれ、手薄なところから町を出て、港へと向かった。
街では悲鳴怒号が飛び交っている。
ナタリアは苦しそうに顔をゆがめ、港に向かって走った。
人々の必死の後押しを受けて立ち止まるわけにはいかないから。
港に着くと、シェリダンの町とは打って変わって、静寂が辺りを包んでいた。
それに、なにやら白い霧のようなものが港全体を覆っている。
首をかしげる一同に、何かに気づいたジェイドが声を上げた。
「これは…伏せなさい!睡眠煙幕です!」
「何!?何とかならねぇのか!?」
「譜術で吹き飛ばします!」
ジェイドの譜術によって視界が良くなると、あちこちに神託の盾兵が倒れているのが見えた。
「これは…シェリダンの人たちがやったみたいだな」
あたりを一通り見回し、起きている人間がいないか確かめていると、今まで隠れていたのか、アストンらが倉庫の影から姿をあらわした。
「おお、あんたたちか!早く!追っ手が来る前にタルタロスに乗り込むんじゃ!」
「わしらの最高傑作だ。頼んだぞい」
「はい。必ず成功させて見せますわ!」
アストンらにせかされてタルタロスに乗り込む。
そして、リグレットらが追いつく前にタルタロスは港を離れた…。
これで安心して地核を静止できる。
…そう思っていた。
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「…つまり、地核が振動していることが魔界の大地液状化の原因だってことか…」
「そうです。よって地核の振動と逆の振動を与えることで、相殺してしまえば大地の液状化は止まるということです」
「それで、その装置が必要になるってことかい。しかし…急を要するんならこれは私たちだけじゃ骨が折れるねぇ…」
タマラが意味深にイエモンとアストンを見つめるのに対し、二人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ぐぬぬぬ…」
「大人気ないよ」
「わかっとるわい!おい、あんたら!ベルケンドに行ってい組の連中を連れてきてくれ」
「い組?」
何のことだかさっぱりわからないという様子のアニスに、ガイが補足する。
「ベルケンドの技術者さ。め組のライバルってとこだな」
「奴らの手を借りるなど、本来ならもってのほかじゃが…この際仕方がない」
「わしらはその間にタルタロスをとりに行ってくる。あの頑丈さは地核に沈めるにはちょうどいいじゃろ」
「あんたらはついでにこれで、セフィロトの振動数を測定してきてくれ」
「わかりました。では、移動にはアルビオールを使いますよ?」
「わかっとるわい。頼んだぞ、ノエル」
「はい。お任せください」
そして、ノエルの力をかりて一同はまずはベルケンドへと向かった。
ベルケンドへ向かうアルビオールの中。
「そういえば、イオン様。セフィロトの場所を御存知ありませんか?」
「セフィロト…ですか?」
イオンが思い出すために考え込んでいると、少しはなれたところに座っているアッシュが声を上げた。
「タタル渓谷だ」
「タタル渓谷?」
「そうだ。その奥にセフィロトがあるとヴァンが言っていた」
「そこに在るのでしたら、まだダアト式封呪は解除していません」
「なら、振動数を計測するのはそこがいいでしょう」
「では、ベルケンドへ行ったあとにタタル渓谷へ?」
「そうですね」
タタル渓谷と聞いて、ティアは複雑な思いに駆られた。
超振動で飛ばされた時の場所。あの頃と比べて随分と状況が変わってしまったように思う。
なにより、ここに彼はいなかった。
彼の名前を出すのはこのパーティでは躊躇われて、今は彼の名前がでることなんてほとんどない。
『ルーク…あなた、今どこにいるの?本当にもうそちら側についたの?』
窓の外を見ながら心の中で問うが、答えなど出てくるわけもない。
ティアはため息をついて、これからのことへと意識を戻した。
ベルケンドについたアッシュたちは、秘密裏に研究所内のい組のもとを訪れた。
ここがヴァンの拠点となっていたこと、スピノザはヴァンと強いつながりがあることから、まずは他の二人を騒ぎにならないように探した。
見つけ出した二人は話を聞くと、怒鳴り声を上げた。
「何で先にわしらにその話をせんかったんじゃ!」
「そうよ!そんな重要なことを!いつもタマラたちばかり…」
「こうしてはおれん!奴らばかりにいい思いをさしてたまるか!!いくぞ、キャシー!」
「わかってるわ!」
老人パワーに圧倒され、ガイは苦笑を浮かべる。
「はは…ま、了解ってことだな」
「では、我々は先にタタル渓谷へ向かいましょう。お二人はその間に準備をお願いしますよ」
そして、その場を離れたのだが、この会話をスピノザが盗み聞いていたことに誰一人として気づいていなかった。
タタル渓谷へついた一行は、その美しさに目を細めた。
しかし、それすらも目に入らないというように進むアッシュとガイの二人。
その様子に、ジェイドがため息をついた。
「お二人とも。焦ったっていいことはありませんよ~」
「あ~…」
「黙れ。一刻を争うんだ。急いで何が悪い」
ばつが悪そうに頭をかくガイと、開き直って睨みつけてくるアッシュ。
その様子に、ジェイドとアニスが同じようなしぐさで呆れを示す。
それを見たアッシュの目が一層険しくなったが、そんなことを気にする二人ではない。
なんともいえない微妙な空気が流れる中、ティアの足元にいたミュウが一方を見つめた。
「何かいるですの」
「何か?」
「わからないですの…魔物じゃないみたいですの」
一同は警戒を強め、そちらのほうへ歩いていく。
木々が草花が生い茂る中、見えたのは一頭の馬のような生き物。
美しい羽の生えた生き物は川のほとりで羽を休めていた。
「ユニセロスだ!!」
アニスが思わず声を上げる。
同時に、全員の目もユニセロスに向けられ、その足元に横たわっている人物に気づいた。
「あれは…」
「ご主人様ですの!!」
「ルーク!!」
ガイが大声で呼びかけるが、横たわった姿に反応はない。
逆に反応を示したのは側にいたユニセロスだった。
ユニセロスはルークの体が見えなくなる位置に立ちはだかると、威嚇するようにその翼を広げた。
こちらに敵意を向けてくるユニセロスに戸惑うが、むざむざやられるわけにはいかない。
剣をぬこうかと構えた一同の後ろから、意外な声がかかる。
「何してるの?剣をおさめなよ」
「お前…シンク!」
敵意ある視線を向けられても、シンクは顔色一つ変えることなく、アッシュたちの立っているところからユニセロスのいるところへ飛び降りた。
興奮している様子のユニセロスであったが、シンクに敵意がないことを察したのか落ち着きを取り戻した。
ユニセロスの顔をひとなでし、シンクはルークの横に膝をつく。
「いつまで寝てるの?」
「……ん…」
「レンティス」
シンクに揺さぶられ、ルークはようやく目を覚ます。
「あれ…?シンク?」
「そうだよ。で、このユニセロスは?」
「ユニセロス…?あ、その馬のこと?なんか散歩してたらいて…しばらく遊んでたら眠くなって…」
寝起きだからか、たどたどしい口ぶりで話すルークにため息をつきたいのを堪え、シンクはだいたいの事情を察する。
ま、要するに寝ていたところあいつらがやってきて、しかも敵意を向けるからユニセロスがルークを守ろうとして威嚇したというところだろう。
ようやく意識がはっきりとしてきたのか、ユニセロスの向こうに見えるアッシュたちの姿に体を強張らせた。
「ルーク!!」
皆からの呼びかけに、ルークは目を伏せて背を向けた。
「シンク、行こう」
「わかってる」
背を向けて立ち去ろうとする二人をみて、ジェイドが足止めのために譜術を詠唱し始める。
しかし、それに気づいたユニセロスが二人を背に乗せ、空へと舞い上がった。
詠唱が終わる前には効果範囲を超えるところまで逃げられており、ジェイドはため息をつく。
「まさかユニセロスに邪魔されるとは思いませんでしたよ」
「ユニセロスが人間になつくなんて聞いたことないよぅ」
やれやれといったように呟く二人に反して、他の四人は重苦しく口を閉ざしていた。
それを振り払うように首を振ると、アッシュは歩みを再開する。
タタル渓谷のセフィロトは目の前だった。
☆なんか・・・はなしすっ飛ばしまくってますね。
私の文章力なんて所詮こんなもの・・・。
「そうです。よって地核の振動と逆の振動を与えることで、相殺してしまえば大地の液状化は止まるということです」
「それで、その装置が必要になるってことかい。しかし…急を要するんならこれは私たちだけじゃ骨が折れるねぇ…」
タマラが意味深にイエモンとアストンを見つめるのに対し、二人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ぐぬぬぬ…」
「大人気ないよ」
「わかっとるわい!おい、あんたら!ベルケンドに行ってい組の連中を連れてきてくれ」
「い組?」
何のことだかさっぱりわからないという様子のアニスに、ガイが補足する。
「ベルケンドの技術者さ。め組のライバルってとこだな」
「奴らの手を借りるなど、本来ならもってのほかじゃが…この際仕方がない」
「わしらはその間にタルタロスをとりに行ってくる。あの頑丈さは地核に沈めるにはちょうどいいじゃろ」
「あんたらはついでにこれで、セフィロトの振動数を測定してきてくれ」
「わかりました。では、移動にはアルビオールを使いますよ?」
「わかっとるわい。頼んだぞ、ノエル」
「はい。お任せください」
そして、ノエルの力をかりて一同はまずはベルケンドへと向かった。
ベルケンドへ向かうアルビオールの中。
「そういえば、イオン様。セフィロトの場所を御存知ありませんか?」
「セフィロト…ですか?」
イオンが思い出すために考え込んでいると、少しはなれたところに座っているアッシュが声を上げた。
「タタル渓谷だ」
「タタル渓谷?」
「そうだ。その奥にセフィロトがあるとヴァンが言っていた」
「そこに在るのでしたら、まだダアト式封呪は解除していません」
「なら、振動数を計測するのはそこがいいでしょう」
「では、ベルケンドへ行ったあとにタタル渓谷へ?」
「そうですね」
タタル渓谷と聞いて、ティアは複雑な思いに駆られた。
超振動で飛ばされた時の場所。あの頃と比べて随分と状況が変わってしまったように思う。
なにより、ここに彼はいなかった。
彼の名前を出すのはこのパーティでは躊躇われて、今は彼の名前がでることなんてほとんどない。
『ルーク…あなた、今どこにいるの?本当にもうそちら側についたの?』
窓の外を見ながら心の中で問うが、答えなど出てくるわけもない。
ティアはため息をついて、これからのことへと意識を戻した。
ベルケンドについたアッシュたちは、秘密裏に研究所内のい組のもとを訪れた。
ここがヴァンの拠点となっていたこと、スピノザはヴァンと強いつながりがあることから、まずは他の二人を騒ぎにならないように探した。
見つけ出した二人は話を聞くと、怒鳴り声を上げた。
「何で先にわしらにその話をせんかったんじゃ!」
「そうよ!そんな重要なことを!いつもタマラたちばかり…」
「こうしてはおれん!奴らばかりにいい思いをさしてたまるか!!いくぞ、キャシー!」
「わかってるわ!」
老人パワーに圧倒され、ガイは苦笑を浮かべる。
「はは…ま、了解ってことだな」
「では、我々は先にタタル渓谷へ向かいましょう。お二人はその間に準備をお願いしますよ」
そして、その場を離れたのだが、この会話をスピノザが盗み聞いていたことに誰一人として気づいていなかった。
タタル渓谷へついた一行は、その美しさに目を細めた。
しかし、それすらも目に入らないというように進むアッシュとガイの二人。
その様子に、ジェイドがため息をついた。
「お二人とも。焦ったっていいことはありませんよ~」
「あ~…」
「黙れ。一刻を争うんだ。急いで何が悪い」
ばつが悪そうに頭をかくガイと、開き直って睨みつけてくるアッシュ。
その様子に、ジェイドとアニスが同じようなしぐさで呆れを示す。
それを見たアッシュの目が一層険しくなったが、そんなことを気にする二人ではない。
なんともいえない微妙な空気が流れる中、ティアの足元にいたミュウが一方を見つめた。
「何かいるですの」
「何か?」
「わからないですの…魔物じゃないみたいですの」
一同は警戒を強め、そちらのほうへ歩いていく。
木々が草花が生い茂る中、見えたのは一頭の馬のような生き物。
美しい羽の生えた生き物は川のほとりで羽を休めていた。
「ユニセロスだ!!」
アニスが思わず声を上げる。
同時に、全員の目もユニセロスに向けられ、その足元に横たわっている人物に気づいた。
「あれは…」
「ご主人様ですの!!」
「ルーク!!」
ガイが大声で呼びかけるが、横たわった姿に反応はない。
逆に反応を示したのは側にいたユニセロスだった。
ユニセロスはルークの体が見えなくなる位置に立ちはだかると、威嚇するようにその翼を広げた。
こちらに敵意を向けてくるユニセロスに戸惑うが、むざむざやられるわけにはいかない。
剣をぬこうかと構えた一同の後ろから、意外な声がかかる。
「何してるの?剣をおさめなよ」
「お前…シンク!」
敵意ある視線を向けられても、シンクは顔色一つ変えることなく、アッシュたちの立っているところからユニセロスのいるところへ飛び降りた。
興奮している様子のユニセロスであったが、シンクに敵意がないことを察したのか落ち着きを取り戻した。
ユニセロスの顔をひとなでし、シンクはルークの横に膝をつく。
「いつまで寝てるの?」
「……ん…」
「レンティス」
シンクに揺さぶられ、ルークはようやく目を覚ます。
「あれ…?シンク?」
「そうだよ。で、このユニセロスは?」
「ユニセロス…?あ、その馬のこと?なんか散歩してたらいて…しばらく遊んでたら眠くなって…」
寝起きだからか、たどたどしい口ぶりで話すルークにため息をつきたいのを堪え、シンクはだいたいの事情を察する。
ま、要するに寝ていたところあいつらがやってきて、しかも敵意を向けるからユニセロスがルークを守ろうとして威嚇したというところだろう。
ようやく意識がはっきりとしてきたのか、ユニセロスの向こうに見えるアッシュたちの姿に体を強張らせた。
「ルーク!!」
皆からの呼びかけに、ルークは目を伏せて背を向けた。
「シンク、行こう」
「わかってる」
背を向けて立ち去ろうとする二人をみて、ジェイドが足止めのために譜術を詠唱し始める。
しかし、それに気づいたユニセロスが二人を背に乗せ、空へと舞い上がった。
詠唱が終わる前には効果範囲を超えるところまで逃げられており、ジェイドはため息をつく。
「まさかユニセロスに邪魔されるとは思いませんでしたよ」
「ユニセロスが人間になつくなんて聞いたことないよぅ」
やれやれといったように呟く二人に反して、他の四人は重苦しく口を閉ざしていた。
それを振り払うように首を振ると、アッシュは歩みを再開する。
タタル渓谷のセフィロトは目の前だった。
☆なんか・・・はなしすっ飛ばしまくってますね。
私の文章力なんて所詮こんなもの・・・。
「これは…!やられましたね」
シュレーの丘でセフィロトの制御装置を見たとき、ジェイドは愕然と呟いた。
制御盤の上では大きな譜陣があり、ところどころ赤く色づいたものがあった。
ジェイドと同じようにそれを見上げていたアッシュも、これが表す状況がどんなものかを悟り憎々しげに舌打ちをした。
「ヴァンか…」
「おそらくそうでしょうね」
「おい、俺たちにもわかるように説明してくれ」
ガイの声にジェイドは気を静めるように一度ゆっくり息を吐くと、説明を始めた。
「セフィロトに暗号が取り付けられてしまっています。これにより、セフィロトは弁が閉じたような状態になっている。このままでは制御もできませんし、外殻は落ちるのを待つばかりです」
「そんな…!」
「何か…何か方法はありませんの!?」
「大佐なら、その暗号っての解けるんじゃないんですかぁ?」
それぞれが不安に満ちた声を上げる中、ジェイドは冷静に答える。
「私に第七音素が使えるなら解いて見せます。しかし…」
「じゃぁ、アッシュとかティアは…?」
「私には…無理だわ」
「…できたらとっくにやっている」
その言葉でこの中の誰もが暗号を解くことはできないことがわかり、一同は肩を落とした。
「もう一つ、方法がないわけではありません」
「何!?」
「アッシュの超振動で無理やりに書き換えるのです。しかし、もう外殻大地を支えるほどのセフィロトツリーは再生できない。魔界への崩落は避けられないでしょう」
「それじゃ、意味ないじゃないですかぁ!!」
「魔界へ崩落する際の衝撃を和らげることはできます。それに、上手くいけば液状化した大地の上でも浮いていられるでしょう」
「でも…」
「ぐだぐだうるせぇ!時間がねぇんだ!やるしかないだろうが!」
アッシュの怒声にまだなにかいいたそうだったアニスも口を閉じる。
納得したかしてないかはさておき、一同が落ち着いたところでジェイドはアッシュに指示を出した。
そして、その指示通りにアッシュが制御盤に手を加えたところで、振動が走った。
「みゅぅぅぅ!怖いですの~!」
「ちょっと大佐!このまま落ちたら私たちも魔界に行っちゃうじゃないですかぁ!」
「ここのセフィロトはルグニカ平野全域を支えてますから、上手くすればタルタロスも一緒に落ちるでしょう」
「旦那、もし…落ちてなかったら?」
「さぁ?」
「さあって…」
不安を抱えつつも、既に崩落は始まってしまっているため、どうにもならない。
ガイはため息をついてこの振動が収まるのを待った。
外に出た一同の前に見えたのは、魔界の瘴気に犯された大気。
それはここが魔界だという間違いようのない証拠だった。
「では、ひとまずタルタロスをとめたところまで戻るんですよね?」
「いえ…ちょっと待ってください。何かが近づいてきてます」
ジェイドの言葉に警戒を強めて辺りを見回す。
すると、上空に大きな機体が姿を現した。
「あれは…浮遊機関!?」
「ガイ、知ってるのですか?」
「あぁ…シェリダンで開発中の創世歴時代の譜業機関だ。…完成してたのか」
ガイが瞳を輝かせて空を見上げる。
するとその機体はアッシュたちから少し離れたところで着陸し、中から一人の女性が姿を現した。
その女性は警戒をまだ解いていない一同に向かって深々と礼をする。
「はじめまして。私はアルビオール二号機のパイロットをしてます、ノエルです。導師イオンの御命令で皆様をお迎えに上がりました」
「イオン様の…命令?」
「はい」
皆が戸惑いの表情を浮かべるのに、ノエルは首をかしげる。
その様子からは、ノエルが嘘をついているとは到底思えない。
「あの…本当に、僕の命令ですか…?」
イオンが一歩進み出て確認を取ろうとすると、今度はノエルの表情が驚愕に染まった。
「導師イオン!?こちらにおいでになってたのですか?でも、あれからどうやって…?」
「あれから?」
「シェリダンにアルビオールを借りに、おいでになりましたよね?」
お互いにいまいち話が食い違っていて、先に進めない。
ジェイドはため息をつくと、とりあえず外殻に戻ることを提案し、アルビオールに乗り込んだ。
外殻に戻ると、まぶしい光が彼らを迎えた。
「あー!!あれってタルタロスですよぉ!!」
崩落したルグニカ地方を見て回っていると、崩落跡のぎりぎりのところで船が浮いているのが見えた。
「おや、落ちてなかったようですねぇ」
「大佐…」
「誰だかはっきりしませんが、“イオン様”に感謝ですね」
皆に咎められるような視線を向けられようとも、全く堪えた様子のないジェイドに皆ため息をつく。
ひとまず、崩落と魔界に取り残される危機からは脱出したものの、また謎が生まれてしまった。
「悪いが、シェリダンに向かってくれ」
「わかりました」
「シェリダンでことの経緯を聞くのか?」
「まぁ、そのほうがいいでしょう」
「そうですね…」
アッシュの言葉をきっかけにシェリダンへ向かった一行は、集会所でめ組の三人と面会した。
「これは、イオン様。アルビオールは役に立ったかのぅ」
「え…えぇ。とても助かりました。それで…ここにアルビオールを借りに来たイオンはどんな様子でしたか?」
アストンはなぜそんなことを聞くのかというように首を傾げるが、イオンの問いに素直に答える。
「どのような様子も何も…フードつきの外套を着ていらっしゃったことぐらいしか」
「だれか…一緒にいませんでしたか?」
「おぉ、ラルゴとか言う大男と、顔を隠した赤い坊主が一緒じゃったぞい」
その瞬間、皆に衝撃が走る。
これで、誰がアルビオールを手配したかはわかった。だが、“イオン”は誰だというのだろう。
特に変わった様子はないという。そんなよく似た影武者がいるのだろうか…。
戸惑いを浮かべる一同の中で、ジェイドとイオン、ガイの三人はどこか思い悩むような様子である。
しかし、彼らはそれぞれ確証を持っていなかった。
ジェイドは理論と推理。
イオンは推測。
ガイは素顔を見たという事実。
それぞれが合わされば、一つの結果にたどり着くのだが、彼らはお互いが知りえている情報を知らなかった。
故に、ほぼわかっているといってもいいジェイドも言及は避けている。
「おい。そいつらがどこに行ったかわかるか?」
「それはわからないわ」
「クソッ」
アッシュが苛立たしげに悪態をつく横で、ジェイドは荷物の中から本を取り出した。
それは、ルークから渡された例の本。
その本を手にしたジェイドは一通り皆を見回した後、口を開いた。
「ひとまず、先に進みましょう。我々には時間がありません。それで…あなた方にも協力をしていただきたいのです」
裏で何かが動いているのは確か。
しかし、その目的が確かでない今、自分たちは前に進むしかなかった。
☆私がジェイドを書くと、彼は理論的でなくなりますね。
・・・だって、私理解しきれてないんですよ;
もう、さらっと見逃してください。
シュレーの丘でセフィロトの制御装置を見たとき、ジェイドは愕然と呟いた。
制御盤の上では大きな譜陣があり、ところどころ赤く色づいたものがあった。
ジェイドと同じようにそれを見上げていたアッシュも、これが表す状況がどんなものかを悟り憎々しげに舌打ちをした。
「ヴァンか…」
「おそらくそうでしょうね」
「おい、俺たちにもわかるように説明してくれ」
ガイの声にジェイドは気を静めるように一度ゆっくり息を吐くと、説明を始めた。
「セフィロトに暗号が取り付けられてしまっています。これにより、セフィロトは弁が閉じたような状態になっている。このままでは制御もできませんし、外殻は落ちるのを待つばかりです」
「そんな…!」
「何か…何か方法はありませんの!?」
「大佐なら、その暗号っての解けるんじゃないんですかぁ?」
それぞれが不安に満ちた声を上げる中、ジェイドは冷静に答える。
「私に第七音素が使えるなら解いて見せます。しかし…」
「じゃぁ、アッシュとかティアは…?」
「私には…無理だわ」
「…できたらとっくにやっている」
その言葉でこの中の誰もが暗号を解くことはできないことがわかり、一同は肩を落とした。
「もう一つ、方法がないわけではありません」
「何!?」
「アッシュの超振動で無理やりに書き換えるのです。しかし、もう外殻大地を支えるほどのセフィロトツリーは再生できない。魔界への崩落は避けられないでしょう」
「それじゃ、意味ないじゃないですかぁ!!」
「魔界へ崩落する際の衝撃を和らげることはできます。それに、上手くいけば液状化した大地の上でも浮いていられるでしょう」
「でも…」
「ぐだぐだうるせぇ!時間がねぇんだ!やるしかないだろうが!」
アッシュの怒声にまだなにかいいたそうだったアニスも口を閉じる。
納得したかしてないかはさておき、一同が落ち着いたところでジェイドはアッシュに指示を出した。
そして、その指示通りにアッシュが制御盤に手を加えたところで、振動が走った。
「みゅぅぅぅ!怖いですの~!」
「ちょっと大佐!このまま落ちたら私たちも魔界に行っちゃうじゃないですかぁ!」
「ここのセフィロトはルグニカ平野全域を支えてますから、上手くすればタルタロスも一緒に落ちるでしょう」
「旦那、もし…落ちてなかったら?」
「さぁ?」
「さあって…」
不安を抱えつつも、既に崩落は始まってしまっているため、どうにもならない。
ガイはため息をついてこの振動が収まるのを待った。
外に出た一同の前に見えたのは、魔界の瘴気に犯された大気。
それはここが魔界だという間違いようのない証拠だった。
「では、ひとまずタルタロスをとめたところまで戻るんですよね?」
「いえ…ちょっと待ってください。何かが近づいてきてます」
ジェイドの言葉に警戒を強めて辺りを見回す。
すると、上空に大きな機体が姿を現した。
「あれは…浮遊機関!?」
「ガイ、知ってるのですか?」
「あぁ…シェリダンで開発中の創世歴時代の譜業機関だ。…完成してたのか」
ガイが瞳を輝かせて空を見上げる。
するとその機体はアッシュたちから少し離れたところで着陸し、中から一人の女性が姿を現した。
その女性は警戒をまだ解いていない一同に向かって深々と礼をする。
「はじめまして。私はアルビオール二号機のパイロットをしてます、ノエルです。導師イオンの御命令で皆様をお迎えに上がりました」
「イオン様の…命令?」
「はい」
皆が戸惑いの表情を浮かべるのに、ノエルは首をかしげる。
その様子からは、ノエルが嘘をついているとは到底思えない。
「あの…本当に、僕の命令ですか…?」
イオンが一歩進み出て確認を取ろうとすると、今度はノエルの表情が驚愕に染まった。
「導師イオン!?こちらにおいでになってたのですか?でも、あれからどうやって…?」
「あれから?」
「シェリダンにアルビオールを借りに、おいでになりましたよね?」
お互いにいまいち話が食い違っていて、先に進めない。
ジェイドはため息をつくと、とりあえず外殻に戻ることを提案し、アルビオールに乗り込んだ。
外殻に戻ると、まぶしい光が彼らを迎えた。
「あー!!あれってタルタロスですよぉ!!」
崩落したルグニカ地方を見て回っていると、崩落跡のぎりぎりのところで船が浮いているのが見えた。
「おや、落ちてなかったようですねぇ」
「大佐…」
「誰だかはっきりしませんが、“イオン様”に感謝ですね」
皆に咎められるような視線を向けられようとも、全く堪えた様子のないジェイドに皆ため息をつく。
ひとまず、崩落と魔界に取り残される危機からは脱出したものの、また謎が生まれてしまった。
「悪いが、シェリダンに向かってくれ」
「わかりました」
「シェリダンでことの経緯を聞くのか?」
「まぁ、そのほうがいいでしょう」
「そうですね…」
アッシュの言葉をきっかけにシェリダンへ向かった一行は、集会所でめ組の三人と面会した。
「これは、イオン様。アルビオールは役に立ったかのぅ」
「え…えぇ。とても助かりました。それで…ここにアルビオールを借りに来たイオンはどんな様子でしたか?」
アストンはなぜそんなことを聞くのかというように首を傾げるが、イオンの問いに素直に答える。
「どのような様子も何も…フードつきの外套を着ていらっしゃったことぐらいしか」
「だれか…一緒にいませんでしたか?」
「おぉ、ラルゴとか言う大男と、顔を隠した赤い坊主が一緒じゃったぞい」
その瞬間、皆に衝撃が走る。
これで、誰がアルビオールを手配したかはわかった。だが、“イオン”は誰だというのだろう。
特に変わった様子はないという。そんなよく似た影武者がいるのだろうか…。
戸惑いを浮かべる一同の中で、ジェイドとイオン、ガイの三人はどこか思い悩むような様子である。
しかし、彼らはそれぞれ確証を持っていなかった。
ジェイドは理論と推理。
イオンは推測。
ガイは素顔を見たという事実。
それぞれが合わされば、一つの結果にたどり着くのだが、彼らはお互いが知りえている情報を知らなかった。
故に、ほぼわかっているといってもいいジェイドも言及は避けている。
「おい。そいつらがどこに行ったかわかるか?」
「それはわからないわ」
「クソッ」
アッシュが苛立たしげに悪態をつく横で、ジェイドは荷物の中から本を取り出した。
それは、ルークから渡された例の本。
その本を手にしたジェイドは一通り皆を見回した後、口を開いた。
「ひとまず、先に進みましょう。我々には時間がありません。それで…あなた方にも協力をしていただきたいのです」
裏で何かが動いているのは確か。
しかし、その目的が確かでない今、自分たちは前に進むしかなかった。
☆私がジェイドを書くと、彼は理論的でなくなりますね。
・・・だって、私理解しきれてないんですよ;
もう、さらっと見逃してください。
「うわぁ…」
シェリダンまで来ると、見たことのない譜業機関ばかりの街にルークは目を輝かせた。
別にガイのように譜業機関そのものに興味があるわけではない。
この街独特の雰囲気がルークには新鮮で目に映るもの全てが楽しかった。
「レンティス、はぐれるなよ」
ふらふらとどこかに行ってしまいそうなルークにラルゴは苦笑して釘を刺す。
するとはっと我に返ったルークがラルゴたちのところに戻ってきた。
「さっきの飛んでた奴、どこにあるんだろうな?」
「さぁ…奥じゃないの?」
「じゃ、行ってみようぜ!」
今にも走り出さん勢いのルークにせかされる様に二人は歩き始めた。
しかし、何か思いついたようにシンクが歩みを止める。
そしておもむろに外套を着込み、フードをかぶった。
その様子にルークは首をかしげる。
「何やってんだ、シンク」
「ちょっと、奥の手の準備かな」
シンクの意味深な言葉にルークは首を傾げるものの、あえて何も言わずに歩みを再会した。
やがて三人がたどり着いたのはシェリダン奥にあるドック。
中には多くの人々が忙しく働いていたが、中でも一番目を引いたのは三人の老人と二人の青年。
皆、喜ばしい顔つきでなにやら話し合っている。
ラルゴはその人たちに近づき声をかけた。
「申し訳ない」
「誰だいアンタ?…神託の盾の人かい」
「神託の盾騎士団第一師団師団長ラルゴという。ここに来る途中に飛行している譜業機関を目にしたのだが…」
「あぁ、アルビオールだね。発掘した飛行譜石をもとに作り出したもののテスト飛行が完了したんだよ」
「それで…いきなりで申し訳ないのだが、そのアルビオールを借り受けることはできないだろうか?」
「アルビオールを…かい?」
老人たちの表情に戸惑いが生まれる。それは同時に、こちらの申し出を渋っているようにも見えた。
そのとき、ラルゴの背後で大人しくしていたシンクが前へ出てきた。
「すみません…どうしても、お借りすることはできませんか?」
その声に、ルークはぎょっとしてシンクを見た。
シンクはおもむろにフードを取ると、仮面をつけていない素顔を晒した。
いつもの不敵な表情ではなく、そこに浮かんでいるのは人のよい笑み。
「これは、イオン様」
「すみません…この世界のためにどうしても必要なんです」
「イオン様がそこまでおっしゃるなら…仕方がありませんのぅ」
「あぁ…ありがとうございます!」
シンクのイオンのような笑顔に、ルークは戸惑いの表情を浮かべる。
なんか…嫌だ。
ルークの思いとは裏腹に会話は進む。
「…では、アルビオールは既に2機出来上がっているのですか?」
「そうとも。わしらシェリダンめ組にとっては朝飯前じゃ」
「ただ、2号機はテスト飛行がまだじゃ」
「そうですか…では、1号機を僕たちに貸していただけますか?そして、2号機をテストが終わりしだいあるところに飛ばして欲しいのです」
「1号機は構いませんが…2号機もですかな?」
「はい。どうしても」
シンクの目に見つめられて、イエモンはしぶしぶながら了承した。
「では、僕は別に行かねばならないところがありますので、代わりの者をつれてきます。少しの間、待っていてください」
そういうと、シンクたちはひとまずドックを後にする。
そして、シェリダンの人通り少ないところまで来たときにシンクは身なりを整え、仮面をつけた。
一応は上手くいったことに一安心していると、背後から暖かい物体が自分の背中にくっついてきた。
それが誰なのかは振り返らないでもわかる。
「何?」
「…いやだ」
何が嫌なのか、シンクにはさっぱりわからなくて、ラルゴと顔を見合わせる。
すると、自分の背中にくっついたままのルークからくぐもった声が聞こえた。
「シンクがシンクじゃないみたいで嫌だ」
その言葉で、どうやら先ほどのイオンのふりをして見せたことが気に入らなかったのだときづく。
「別にどっちでもいいでしょ…」
「シンクじゃなきゃ嫌だ」
変わらないんだから、と続けようとした言葉はルークの言葉にさえぎられる。
その言葉に、シンクは胸のうちで何かがはねた。
イオンでもなく、イオンレプリカでもなく、シンクが誰かに求められたことに喜びを覚えた。
そんなシンクの様子を悟ったかのように、ラルゴがシンクに笑顔を向ける。
「良かったな、シンク」
からかっているのがわかるその笑みに、シンクは顔が火照るのを感じた。
「……ッ!さっさと行くよ!」
怒ったような声だが、それが照れ隠しから来るものだということをラルゴはわかっていた。
込上げてくる笑いをかみ殺しながら、ラルゴは後を追った。
☆・・・シンクがシンクじゃないorz
シェリダンまで来ると、見たことのない譜業機関ばかりの街にルークは目を輝かせた。
別にガイのように譜業機関そのものに興味があるわけではない。
この街独特の雰囲気がルークには新鮮で目に映るもの全てが楽しかった。
「レンティス、はぐれるなよ」
ふらふらとどこかに行ってしまいそうなルークにラルゴは苦笑して釘を刺す。
するとはっと我に返ったルークがラルゴたちのところに戻ってきた。
「さっきの飛んでた奴、どこにあるんだろうな?」
「さぁ…奥じゃないの?」
「じゃ、行ってみようぜ!」
今にも走り出さん勢いのルークにせかされる様に二人は歩き始めた。
しかし、何か思いついたようにシンクが歩みを止める。
そしておもむろに外套を着込み、フードをかぶった。
その様子にルークは首をかしげる。
「何やってんだ、シンク」
「ちょっと、奥の手の準備かな」
シンクの意味深な言葉にルークは首を傾げるものの、あえて何も言わずに歩みを再会した。
やがて三人がたどり着いたのはシェリダン奥にあるドック。
中には多くの人々が忙しく働いていたが、中でも一番目を引いたのは三人の老人と二人の青年。
皆、喜ばしい顔つきでなにやら話し合っている。
ラルゴはその人たちに近づき声をかけた。
「申し訳ない」
「誰だいアンタ?…神託の盾の人かい」
「神託の盾騎士団第一師団師団長ラルゴという。ここに来る途中に飛行している譜業機関を目にしたのだが…」
「あぁ、アルビオールだね。発掘した飛行譜石をもとに作り出したもののテスト飛行が完了したんだよ」
「それで…いきなりで申し訳ないのだが、そのアルビオールを借り受けることはできないだろうか?」
「アルビオールを…かい?」
老人たちの表情に戸惑いが生まれる。それは同時に、こちらの申し出を渋っているようにも見えた。
そのとき、ラルゴの背後で大人しくしていたシンクが前へ出てきた。
「すみません…どうしても、お借りすることはできませんか?」
その声に、ルークはぎょっとしてシンクを見た。
シンクはおもむろにフードを取ると、仮面をつけていない素顔を晒した。
いつもの不敵な表情ではなく、そこに浮かんでいるのは人のよい笑み。
「これは、イオン様」
「すみません…この世界のためにどうしても必要なんです」
「イオン様がそこまでおっしゃるなら…仕方がありませんのぅ」
「あぁ…ありがとうございます!」
シンクのイオンのような笑顔に、ルークは戸惑いの表情を浮かべる。
なんか…嫌だ。
ルークの思いとは裏腹に会話は進む。
「…では、アルビオールは既に2機出来上がっているのですか?」
「そうとも。わしらシェリダンめ組にとっては朝飯前じゃ」
「ただ、2号機はテスト飛行がまだじゃ」
「そうですか…では、1号機を僕たちに貸していただけますか?そして、2号機をテストが終わりしだいあるところに飛ばして欲しいのです」
「1号機は構いませんが…2号機もですかな?」
「はい。どうしても」
シンクの目に見つめられて、イエモンはしぶしぶながら了承した。
「では、僕は別に行かねばならないところがありますので、代わりの者をつれてきます。少しの間、待っていてください」
そういうと、シンクたちはひとまずドックを後にする。
そして、シェリダンの人通り少ないところまで来たときにシンクは身なりを整え、仮面をつけた。
一応は上手くいったことに一安心していると、背後から暖かい物体が自分の背中にくっついてきた。
それが誰なのかは振り返らないでもわかる。
「何?」
「…いやだ」
何が嫌なのか、シンクにはさっぱりわからなくて、ラルゴと顔を見合わせる。
すると、自分の背中にくっついたままのルークからくぐもった声が聞こえた。
「シンクがシンクじゃないみたいで嫌だ」
その言葉で、どうやら先ほどのイオンのふりをして見せたことが気に入らなかったのだときづく。
「別にどっちでもいいでしょ…」
「シンクじゃなきゃ嫌だ」
変わらないんだから、と続けようとした言葉はルークの言葉にさえぎられる。
その言葉に、シンクは胸のうちで何かがはねた。
イオンでもなく、イオンレプリカでもなく、シンクが誰かに求められたことに喜びを覚えた。
そんなシンクの様子を悟ったかのように、ラルゴがシンクに笑顔を向ける。
「良かったな、シンク」
からかっているのがわかるその笑みに、シンクは顔が火照るのを感じた。
「……ッ!さっさと行くよ!」
怒ったような声だが、それが照れ隠しから来るものだということをラルゴはわかっていた。
込上げてくる笑いをかみ殺しながら、ラルゴは後を追った。
☆・・・シンクがシンクじゃないorz
ピオニーからセントビナー周辺に崩落の危険があることを知らされ、アッシュたちはひとまずそちらへ向かうことになった。
ルークからのあの謎かけのような言葉と本について、アッシュは聞きたがったが、まだ確証がないため一度セフィロトに言って確かめなくては詳しいことは言えないというジェイドに仕方なく従い、ひとまず大人しくセントビナーに向かうことになった。
セントビナーについた一行は、確かに大地に亀裂が入り崩落が始まっている現状に息を呑んだ。
しかし、それと同時に予想に反して街が静まり返っているのが気にかかる。
「…変ですね。人が見当たりません」
「避難したのか?」
「わかりません。陛下はまだ避難はできていないと言っていましたが…」
戸惑う一同のもとに、マクガヴァン将軍が声をかけた。
「ジェイド・カーティス大佐」
「これは、将軍。民がいないようですが、これはどういうことです?」
「……民は既にケセドニアに避難を開始しております」
「どういうことです?」
ジェイドのまなざしを受け、マクガヴァン将軍はため息をつくとことの顛末を話し始めた。
始まりは昨日のこと。
大地がひび割れ、不安と恐怖に包まれていた街に大変な数の馬車が現われた。
それは『暗闇の夢』と呼ばれる旅のサーカス一団だった。
彼らは街が崩落を始めているのを見て、軍が動けないならば自分たちがケセドニアにまで送り届けると伝えてきたのだ。
マクガヴァンは最初渋ったが、民の中からここ脱出することを強く希望した者が出たため、混乱を避けるために行きたいものは自主避難という形でここから避難をしたというのだ。
それを聞いたアッシュたちは皆一様に驚きと戸惑いの表情を浮かべた。
「えー!!だってそいつらって、漆黒の翼でしょ!?」
「…あいつらは自分で義賊だって言ってたからな。人助けするってのもありえなくはないんだろうが…」
「けれど、ここの住民を避難させることができるだけの馬車を、あの方たちはどうやって用意したのかしら」
アッシュとジェイドは、この望ましすぎる結果に眉をひそめた。
グランコクマでさえまだ十分な対策を練られていなかったこのときに、大量の馬車を準備して、住民避難を完了させるということが偶然でできるだろうか。
答えは否だ。
偶然でできるわけない。
できるとすれば、あらかじめここの崩落を知っていた何者かが事前に準備を行っていれば、だ。
何者かの意図が働いていることに気味悪さを感じるが、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「事情はわかりました。では、駐留軍もエンゲーブまで退避してください。そこで、キムラスカの警戒を」
「しかし…」
「ピオニー陛下からの許可は頂いてます」
「わかった…そのようにしよう」
マクガヴァンの背を見送ってから、ジェイドはイオンを振り返った。
「イオン様。この地域を支えるセフィロトがどこにあるのか知っていますか?」
「たしか、シュレーの丘です」
「では、そこへ向かいましょう。ただ、もしかすると…」
「罠かもしれない…か?」
アッシュの言葉に、ジェイドは頷く。
その様子に、ナタリアたちは息を呑んだ。
「…たしかに、この現状はできすぎている。慎重に行くのがいいと思うわ」
「ティアの言うとおりです。何が待ち受けているのかわからない。慎重に…かつ迅速に行きましょう」
ジェイドの言葉に、一同は皆無言で頷く。
そして、シュレーの丘目指して歩み始めた。
「シンク、アレで本当に大丈夫なのか?」
ラルゴからの声かけに、先を進んでいたシンクは足を止めて振り返った。
「大丈夫だよ。あいつらはアリエッタと同郷で預言を憎んでる。特に秘密預言をね。ああ言ってあげれば進んで動くさ」
シンクはどこから仕入れたのか、暗闇の夢…もとい漆黒の翼がフェレス島の出身であり、秘密預言へ恨みがあることを利用したのだ。
預言にセントビナーの崩落が詠まれていると、嘘の情報を漆黒の翼に伝えた。
始めはダアトの人間と言うこともあって信用していなかった漆黒の翼の連中だが、実際にセントビナーの現状を目にすると、慌ててどこかに走って言った。
避難が開始となる前にシンクたちは次の目的地に向かい始めたため、漆黒の翼があの後どのように動いたかは確認できていなかった。
だからこそ、ラルゴは大丈夫なのかと心配しているのだが、シンクは何も気にしていない様子。
ルークのほうはシンクの大丈夫という言葉を信用しきっている。
これ以上追求しても無駄だと判断したのか、ラルゴは一つため息をついて歩みを再会した。
「それで、これからはどうするんだ?」
「一応は手は打ったからね。後はあいつらがどう動くかしばらく見るだけだよ」
「…そんな簡単でいいのか?」
ヴァンはいくつもの策略を巡らし、預言を潰すために準備を行っていた。
しかし、シンクの行動はかなり単純といえば単純なものばかりである。
ラルゴが不信に思っても仕方のないことだ。
だが、シンクの余裕の笑みは崩れない。
「ヴァンの計画をいわば利用しているからね。それに、あっちには死霊使いがいる。うまく立ち回ってくれるさ。ヒントは十分に与えたんだ」
「…ひとまずは様子を見るしかないということか」
「ま、そういうことだね」
「シンクー!ラルゴー!」
話をしている二人に、少し離れていたところで空を見上げていたルークが呼びかけた。
「どうしたの、レンティス」
「アレ何ー?」
ルークが指差した先にあるのは遠くに見える鳥のような物体。
しかし、鳥にしては大きく、そして、翼部光のようなものが二本でていた。
「…なんだアレは。譜業機関か?」
「あの方向はシェリダンだね。そういえば…飛行譜石の開発がされるとか言ってたね」
「では、それか」
「シンク…あのさ…」
ルークはいいにくそうに口ごもってはいるが、その目はあの飛ぶ物体に興味を示しているのがありありと伺える。
シンクは数秒考えるようなしぐさをしてから、ルークの考えを了承するかのように頷いた。
「いいよ、使えるかも知れなし、行こうか」
「そうだな。上手くいけば移動も楽になる」
「うん!行こうぜ!!」
ルークの笑顔に誘われるまま、三人はシェリダンへと足を向けた。
☆捏造といえども…難しいなぁ。
ルークからのあの謎かけのような言葉と本について、アッシュは聞きたがったが、まだ確証がないため一度セフィロトに言って確かめなくては詳しいことは言えないというジェイドに仕方なく従い、ひとまず大人しくセントビナーに向かうことになった。
セントビナーについた一行は、確かに大地に亀裂が入り崩落が始まっている現状に息を呑んだ。
しかし、それと同時に予想に反して街が静まり返っているのが気にかかる。
「…変ですね。人が見当たりません」
「避難したのか?」
「わかりません。陛下はまだ避難はできていないと言っていましたが…」
戸惑う一同のもとに、マクガヴァン将軍が声をかけた。
「ジェイド・カーティス大佐」
「これは、将軍。民がいないようですが、これはどういうことです?」
「……民は既にケセドニアに避難を開始しております」
「どういうことです?」
ジェイドのまなざしを受け、マクガヴァン将軍はため息をつくとことの顛末を話し始めた。
始まりは昨日のこと。
大地がひび割れ、不安と恐怖に包まれていた街に大変な数の馬車が現われた。
それは『暗闇の夢』と呼ばれる旅のサーカス一団だった。
彼らは街が崩落を始めているのを見て、軍が動けないならば自分たちがケセドニアにまで送り届けると伝えてきたのだ。
マクガヴァンは最初渋ったが、民の中からここ脱出することを強く希望した者が出たため、混乱を避けるために行きたいものは自主避難という形でここから避難をしたというのだ。
それを聞いたアッシュたちは皆一様に驚きと戸惑いの表情を浮かべた。
「えー!!だってそいつらって、漆黒の翼でしょ!?」
「…あいつらは自分で義賊だって言ってたからな。人助けするってのもありえなくはないんだろうが…」
「けれど、ここの住民を避難させることができるだけの馬車を、あの方たちはどうやって用意したのかしら」
アッシュとジェイドは、この望ましすぎる結果に眉をひそめた。
グランコクマでさえまだ十分な対策を練られていなかったこのときに、大量の馬車を準備して、住民避難を完了させるということが偶然でできるだろうか。
答えは否だ。
偶然でできるわけない。
できるとすれば、あらかじめここの崩落を知っていた何者かが事前に準備を行っていれば、だ。
何者かの意図が働いていることに気味悪さを感じるが、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「事情はわかりました。では、駐留軍もエンゲーブまで退避してください。そこで、キムラスカの警戒を」
「しかし…」
「ピオニー陛下からの許可は頂いてます」
「わかった…そのようにしよう」
マクガヴァンの背を見送ってから、ジェイドはイオンを振り返った。
「イオン様。この地域を支えるセフィロトがどこにあるのか知っていますか?」
「たしか、シュレーの丘です」
「では、そこへ向かいましょう。ただ、もしかすると…」
「罠かもしれない…か?」
アッシュの言葉に、ジェイドは頷く。
その様子に、ナタリアたちは息を呑んだ。
「…たしかに、この現状はできすぎている。慎重に行くのがいいと思うわ」
「ティアの言うとおりです。何が待ち受けているのかわからない。慎重に…かつ迅速に行きましょう」
ジェイドの言葉に、一同は皆無言で頷く。
そして、シュレーの丘目指して歩み始めた。
「シンク、アレで本当に大丈夫なのか?」
ラルゴからの声かけに、先を進んでいたシンクは足を止めて振り返った。
「大丈夫だよ。あいつらはアリエッタと同郷で預言を憎んでる。特に秘密預言をね。ああ言ってあげれば進んで動くさ」
シンクはどこから仕入れたのか、暗闇の夢…もとい漆黒の翼がフェレス島の出身であり、秘密預言へ恨みがあることを利用したのだ。
預言にセントビナーの崩落が詠まれていると、嘘の情報を漆黒の翼に伝えた。
始めはダアトの人間と言うこともあって信用していなかった漆黒の翼の連中だが、実際にセントビナーの現状を目にすると、慌ててどこかに走って言った。
避難が開始となる前にシンクたちは次の目的地に向かい始めたため、漆黒の翼があの後どのように動いたかは確認できていなかった。
だからこそ、ラルゴは大丈夫なのかと心配しているのだが、シンクは何も気にしていない様子。
ルークのほうはシンクの大丈夫という言葉を信用しきっている。
これ以上追求しても無駄だと判断したのか、ラルゴは一つため息をついて歩みを再会した。
「それで、これからはどうするんだ?」
「一応は手は打ったからね。後はあいつらがどう動くかしばらく見るだけだよ」
「…そんな簡単でいいのか?」
ヴァンはいくつもの策略を巡らし、預言を潰すために準備を行っていた。
しかし、シンクの行動はかなり単純といえば単純なものばかりである。
ラルゴが不信に思っても仕方のないことだ。
だが、シンクの余裕の笑みは崩れない。
「ヴァンの計画をいわば利用しているからね。それに、あっちには死霊使いがいる。うまく立ち回ってくれるさ。ヒントは十分に与えたんだ」
「…ひとまずは様子を見るしかないということか」
「ま、そういうことだね」
「シンクー!ラルゴー!」
話をしている二人に、少し離れていたところで空を見上げていたルークが呼びかけた。
「どうしたの、レンティス」
「アレ何ー?」
ルークが指差した先にあるのは遠くに見える鳥のような物体。
しかし、鳥にしては大きく、そして、翼部光のようなものが二本でていた。
「…なんだアレは。譜業機関か?」
「あの方向はシェリダンだね。そういえば…飛行譜石の開発がされるとか言ってたね」
「では、それか」
「シンク…あのさ…」
ルークはいいにくそうに口ごもってはいるが、その目はあの飛ぶ物体に興味を示しているのがありありと伺える。
シンクは数秒考えるようなしぐさをしてから、ルークの考えを了承するかのように頷いた。
「いいよ、使えるかも知れなし、行こうか」
「そうだな。上手くいけば移動も楽になる」
「うん!行こうぜ!!」
ルークの笑顔に誘われるまま、三人はシェリダンへと足を向けた。
☆捏造といえども…難しいなぁ。