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決して私情に流されるでない。
何が善で何が悪であるか見極められる目を持て。
すぎた感情は目を曇らせる。
帝国を悪と決め付けるのではなく、公正な価値観を持つのだ。
なに。非情になれというのではない。
下町の者たちを愛しくおもい、過ぎた権力を憎むお前ならばわかるだろう。
人を愛しく思いなさい。
それを守りたいと思いなさい。
悪なのは人ではなく、そうした環境にある。
しかし、その悪しき環境は人を悪にせしめるだけでなく、麻薬のようにそれから抜け出せなくする。
・・・そうなってしまえば、断ずることしかできぬときもあるだろう。
だが、最後まで疑いなさい。
それが本当に正しいのか、自分がすべきことなのか。
迷い、考え・・・最後には自身の命ずるままに・・・。
下町の宿屋の一室。
そこを借り受けているユーリはふと目を覚ました。
「・・・久しぶりに夢見たな。そういや、しばらく顔も見に行ってないしな」
ぼんやりとしたまま、ユーリは夢の内容を振り返る。
出てきたのは、自分を育ててくれたひと。
そして、その人が暗行御史をするといった自分に贈ってくれた言葉だ。
温かくも厳しい言葉は、今でもユーリの中に深く根付いている。
ユーリは、もともと孤児であった。
親の顔も声も知らず、ただ蔦で編んだかごに入れて、打ち捨てられていたという。
通りを通る誰もが見て見ぬふりをし、近寄るものさえいなかった赤ん坊に手を差し出したのは、そこの籠の置かれた建物の主であった。
その主は、ユーリへあらゆる知識を教え、わが子のように可愛がった。
時に厳しく、時に優しく…
そしてユーリが7歳になったころ、とある男と出会った。
暗行御史
その存在は、この帝国において英雄のような扱いをされているものだった。
だがそれは、正義の味方が悪人から弱い者を守る・・・という名のおとぎ話の中でのこと。
現実でいるものではない……そう、世間からは思われていた。
だが、実際にその人はいたのだ。
ユーリが出会った暗行御史は、別に体格が良いでもなく、どこにでもいそうな男だった。
もう、初老ともいえる年代。
だが、その眼光だけは衰えを知らず、輝いていた。
その暗行御史とユーリの養い親の絆は深く、暗行御史とユーリも自然と親しくなっていった。
養い親の街しか知らないユーリを旅に連れて行ったのもその人だ。
そうして3年。
その人は、暗行御史の座をユーリに譲ると、どこかへふらりといってしまった。
ユーリは弱冠10歳で暗行御史となった。
先代は、今どこにいるのか、老後を楽しんでいるのか、はたまた亡くなってしまったか・・・それすら、今のユーリには知る術がない。
ユーリは固まった体を伸ばすように大きく伸びをした。
窓から差し込む日にめをほそめていると、ばたばたとせわしない足音が駆けてくる。
「ユーリ!大変だよ!!」
「あ?どうした、テッド」
「また、水道魔導器が壊れちゃったんだ!せっかく直してもらったのに」
窓から眺めると、とんでもない量の水が溢れ出しているのが見えた。
また、騒動だ。
仕方ねぇな・・・と口にしながら、ユーリは腰を上げる。
そして、それをどうにかするために歩みだしたのであった。
・・・皇位継承者候補、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン・・・か。
貴族の屋敷に魔核を探しに行って、騎士団につかまり…ここまではいつものこと。
だが、そこからはユーリにとっても予測できない事態。
一応は魔道器の魔核を探す…という目的で、騎士団に追われ、下町の住民に押し出され・・・よくわからないうちに町を出てしまっていた。
暗行御史の証である刀は自分で持っているからいいものの、何も持たぬまま・・・だ。
しかも隣には、自称貴族令嬢であるエステリーゼ。
適当なところで騎士団に渡していくつもりだったのが、何の因果か一緒に旅をすることになってしまった。
ちらりと横目に見ると、エステリーゼは何もかもが珍しいというように、あちこちきょろきょろ見回している。
あまり皇位継承者として、顔が知られていないとはいえ、目立つのは避けたい。
暗行御史は常に影から世界を見ていかなくてはいけない。
暗行御史が表に出ることあれば、それは必ず世界の混乱を招く。
・・・これはじぃさんが何度も何度もいっていたことだ。
別に、俺自身も目立って行動しようなんて気はさらさらないから、いいけどな。
問題は、どうやら厄介ごとを引き寄せてしまう自分の体質?と
問題に首を突っ込んでいくお姫様にあるだろう。
ふぅ、とため息をつくと前を歩いていたエステルが振り返る。
その眼が、まぁるく見開かれる。
「ユーリ…そのこは?」
エステルに促されて後ろを振り返ると、荷物をくわえた犬…ラピードがしっぽをふりつつ、ユーリを見上げていた。
「ラピード!」
重いだろう荷物を受け取り、その体をくしゃくしゃと撫でる。
ユーリの相棒はこんな状況でも、彼の旅荷物を持ってきたのだ。
「サンキュな、ラピード」
「わうっ!」
「エステル、こいつはラピード。おれの相棒だ」
「わぁ…よろしくお願いします。」
しゃがみこんで手を差し出すエステル
だが、ラピードの反応は…
ふいっとそむけられた顔。
エステルの顔が悲しそうに歪むのを見て、ユーリは思わず笑う。
そして、旅は始まった。
私の知識が間違っているかもしれませんが、ここでは帝国の行いを監視・断罪するものとします。
しかし、その存在は市民の間では噂・御伽噺程度の認識。
帝国の上層部には、存在は伝えられているが、どのような人物かは知らされていない。
知るのは自分が断罪されるときなので、広まらない。
実際に知っているのは皇帝一人きり。
皇帝が変わるときは、暗行御史が一度だけ皇帝に挨拶に行くのみ。
基本的に暗行御史は一人で自由に世界を回っている。
ちなみに現暗行御史は一人だけ。
協力する情報屋はいるが、同業者はいない。
暗行御史の証として、背中には大きな刺青。模様はタイトル画面のヴェスペリアマークで。
そして、刀身に帝国のマークと刺青と同じ模様(独断で凛々の明星の紋とします)の刻印がされてあるものを持っている。
ユーリは孤児で別の町の生まれ。
実はフレンに会う前から暗行御史でした・・・的な設定。
アビス作品は放置ったまんまなので、どうにかかんけつさせたい気はあるが、どうなるかはわかりません。
ログ見ると、こんな放置サイトを見に来てくださる方がいるようなので、ちょっと頑張りたいです。
「で、次はラジエイトゲートだよな?」
「・・・なんで、テメェがそんなこと知ってやがる」
ダアトから出てきて早々、次の目的地を口にしたルークにアッシュは疑いの目を向ける。
「だって、エルドラントの障壁崩すんなら、ゲート閉じなきゃいけねぇだろ?」
「・・・てめぇ、一体どこまで知ってる」
「内緒。てか、アッシュ。あんまり考えすぎると禿げるぜ?」
「うるせぇ!!」
にやりとからかうような視線を向けたルークに、アッシュの雷が落ちる。それをルークことエルは平然と受け流し、『ルーク』が慌てた様子でアッシュを宥めている。
「・・・まぁともかく、ラジエイトゲートへ向かいましょう。ヴァンが復活した以上、妨害が入らないとも限りません。早く動くに越したことはないでしょう」
「そうですね。いいわね、『ルーク』、アッシュ」
「あ、うん」
「・・・チッ」
しぶしぶといった感じではあるが、一行はアルビオールに乗ってラジエイトゲートに向かって飛び立った。
「なぁ、この辺で一度休憩を取らないか?」
長距離の飛行は運転士であるノエルに多大な負担がかかる。
時折、休ませてあげなくてはならない。
日が沈み始めた頃、ガイはそう言って皆に提案をした。
幸いにも、下は野宿でも過しやすそうな平野が続いている。
「そうですね、一度着陸して休みましょうか」
「やったー。アニスちゃんおなかペコペコー!!」
「そうですわね。しばらく何も食べてませんもの」
「食事も作りましょう。今日の当番は・・・『ルーク』ね」
「えー・・・疲れたときに『ルーク』の料理~?」
「悪かったな」
「・・・俺が作ろうか?」
エルが声をかけると、途端ににぎわっていた会話が止まる。
信用されてないという事実に、エルは苦笑いを浮かべる。
まぁ、自分が彼らの立場であってもそうだろうから、別に怒る気はしないが、少し悲しくなってしまうのは、自分がやはり彼らを知っているからであろう。
・・・たとえ、エルの知っている彼らが今ここにいる彼らとは真の意味で同じではないとしても・・・。
「あー・・・わりぃ。いきなり出てきた奴に料理なんて、食べた奴の命に関わるもん作らせるわけにはいかねぇよな」
「いや、そんなことを心配してるんじゃなくて・・・」
「あー、きにすんなって。俺はなんか適当に捕ってくるから、料理当番頑張れよ、『ルーク』」
「あ、ちょ・・・!」
『ルーク』が引き止める間もなく、エルは手を振りながらどこかへ歩いていく。
それを彼らは見送ることしか出来なかった。
夜もふけ、皆が食事を済ませた頃、エルは戻ってきた。
といっても、第七音素の集合体・・・ローレライと近しい存在となっているエルにとって、食事など必要としないため、ふらふらとそのあたりを回ってきただけなのだが。
得るの姿を見つけると、『ルーク』が慌てた様子で近づいてきた。
エルは首をかしげる。何かあったのだろうか。
「遅い。心配してたんだぞ。」
「俺を?」
「他に誰がいるんだよ」
少し拗ねたように頬を膨らませる『ルーク』にエルは苦笑いを浮かべる。
他の仲間たちも、口にはださないがどこかばつの悪そうな顔を浮かべている。
アッシュはこちらに背を向けていて、表情はわからないが、いつもと同じように眉間に皺を寄せているのだろう。
エルと視線の会ったジェイドはやれやれというように肩をすくめて見せる。
それらをみて、エルは思わず噴出した。
『ルーク』が突然笑い出したエルに驚いた顔をしたが、笑いを止められない。
やっぱり、自分の知っている彼らと、この彼らは違うのだろうが、本質は変わらない。
なんて愛しい
そんなあなたたちだから、俺は俺の存在をかけることができたんだ
されない
自分にかけられた言葉も、伸ばされた手も振り切って、タルタロスから地核へと身を投げた。
落ちているはずなのに、心地よく体を包む浮遊感。
全てに絶望し憎んでいたが、こうして落ちていくうちに、どこか安らかな心地になるのが不思議だ。
自分の体を構成する第七音素が、還っていくことを懐かしんでいるのか。
そんなことを考えて、シンクは自嘲の笑みを浮かべる。
今更、そんなことはどうでもよいことではないか。
自分はもうすぐ死ぬのだから。
でも・・・
もし許されるのであれば・・・
誰にも必要とされない、不必要なものとされた人生ではなく
誰かに必要とされる生を生きてみたかった
『そんなの、じっと待ってて得られるものじゃないだろ?自分の手でつかみとってみなよ』
・・・誰さ?
突如として聞こえてきた声に、シンクは閉じていた目を開いた。
目の前にあるのは緑色の光。
『餞別に僕の加護をあげるよ。ま、いらないことかもしれないけどね。せっかくなんだから、あがいてみなよ』
・・・な!?
心地よい浮遊感が一転。激しい嵐のような渦に巻き込まれる。
あんた、誰だよ!?
『誰って言われてもね。気が向いたら教えてあげるよ』
待て!
思わず光に向かって手を伸ばす。
しかし、その手が掴んだのは緑の光ではなく、布の感触。
しかも、自分の体ではないと思うほどに、動かすのが億劫だった。
シンクがいぶかしげに思っていると、頭の上から声が聞こえた。
「ほぉ・・・面白い」
聞き覚えのある声。
見あげると、予想していたとおりの人物。
・・・ヴァン
「何の刷り込みもしていないのに、自ら動くとは・・・レプリカでも生への執着というものがあるのか」
「まさか。偶然でしょう。生まれたばかりのレプリカにそんなものがあるはずがありません」
「だが、こいつは使えそうだ」
自分を見て、にやりと笑うヴァン。
むせ返るほどの熱気、火山。
見たことのある光景。
「ディスト、こいつを教育しろ。駒として使えるだろう」
「どうして、この私が!」
「お前意外にいまい。任せたぞ」
「きー!!」
ああ、そうか。
これは・・・
自分が作られたときの光景だ。
ならば、自分は舞い戻ってきたのか。
『そんなの、じっと待ってて得られるものじゃないだろ?自分の手でつかみとってみなよ』
あの声の主は、もう一度やり直してみろと、あがけというのか
この何もない、くだらない世界で。
シンクは、ぎりっと奥歯を噛み締めた。
口の中を切ったせいで血の味が口腔内に広がるが、今のシンクにはそんなことはどうでもよかった。
今のシンクにあるのは戸惑いと憎しみ。
そして、耐え難いほどの虚脱感だった。