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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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「嘘です!!ユーリがそんなことするはずはありません!!」
「そうだよ!まだそんなに長いこと一緒にいるわけじゃないけど・・・ユーリがそんなことする人じゃないってわかる!」

宿屋でユーリの帰りを待っていたエステリーゼたちは、フレンの言葉にそう反論した。
フレンとて、信じたくはない。
しかし、見てしまったのだ。
血に濡れた刀をもって、ラゴウの前に佇むユーリの姿を。

それでも、ユーリが自分はやっていないと言えばフレンは信じただろう。

だが・・・





ユーリは否定しなかった。








ぎりっと、フレンは固く拳を握る。



「とにかく、何かの間違いにきまってます!ユーリを探して事情を・・・」
「僕だって、ユーリがやっていないと信じたい!!でも、だめなんだ!!だめなんですよ!!」

フレンの叫びが響き、逆に部屋の中はしんと静まり返った。
エステリーゼも、いつも柔らかな雰囲気を絶やさないフレンの並々ならない様子に、ついに顔を覆って泣き始めてしまう。
そして、カロルも涙をこらえてはいるが、その目からはこらえきれない涙が幾度も零れ落ちた。



「起こったことには必ず原因・要因・環境が関連し、時に不確定要素もはいるわ。魔導器ならそれぐらいで済むけど、人間はそれに思考や役割・感情が交じる。・・・魔導器よりやっかいなものよ。あんたは、ユーリが血に濡れた剣をもって、被害者の前に立ってた。そして、それを否定せずに逃げたっていうことしか見てないじゃない。」
「それは・・・」
「信じないだの、なんだの言う前に、その辺はっきりしたほうがいいんじゃないの?」


リタの言葉を聞いたエステルは、ぐっと流れた涙を拭き顔をあげた。

「・・・そう・・・ですね。そうですよね!フレン、私はやっぱりユーリを探します。そして、彼の口からきちんと聞きたい」
「僕も!」
「ワン!」
「・・・あんたらだけじゃ危なっかしいから、あたしもいくわ」

活気を取り戻した室内で、フレンも思わず笑みを浮かべる。

「・・・私は、ひとまず騎士団に戻ります。評議会の人間が殺された以上、評議会が黙ってないでしょうから・・・。そちらのほうが情報も集まるでしょう」
「隊長!」
「別に、ユーリの罪を隠蔽するとか言ってるんじゃないよ、ソディア。真実を確かめるだけだ」
「・・・・・・わかりました」

不満げなソディアを説き伏せたフレンは一国の猶予も惜しいと言わんばかりに、すぐさま立ち上がる。
そして、エステリーゼたちに別れを告げると、帝国へと向かった



「・・・やってくれるな」

机に肘をついて溜息をつきながらも、報告書に目を通した騎士団長・・・アレクセイの眼は笑っている。
その様子に、レイブン・・・いや、シュバーンは肩をすくめて見せた。

「大将、それはどういう意味で?」
「もちろん、褒めているのさ。あの腐りきった評議会の元締めに目をつけ、それをやりきる度胸。その成果に比べれば、少々のミスなど何のマイナスにもならない。今回のこと程度の弊害ならば、私が処理すればよいことだ」
「さすがは騎士団長閣下」

楽しそうに笑うシュバーンに、今度はアレクセイが渋い顔をする。
若くして騎士団長という位についたアレクセイは、騎士団内部において絶大な信頼を得ていた。
能力に応じて公正に行われる人材起用
能力に劣るものも切り離さず、その者が持つ能力を生かせるような配置
そして、いざというときは自分が責任を持つ、という姿勢。
これにより、部下は失敗を恐れず能力を最大限に発揮できる。
強いカリスマを持つ指導者・・・それがアレクセイだ。
そのカリスマと人となりを支持するものは多い。口にして言いはしないが、シュバーンもその一人だ。・・・まぁ、貴族のお坊ちゃん連中には好かれないことが多いが・・・

「茶化すな、シュバーン。お前にも働いてもらうぞ」
「はいはい・・・・・・人使いの荒い・・・」
「ならば、今後永遠に休みにしてやってもいいが?」
「謹んで任務を承ります、騎士団長閣下!」

びしっと手本のような敬礼をしてみせるシュバーンに、アレクセイは口元を緩める。
おどけて見せたり真面目に見せたりと、せわしない男だが実力は確かだ。
自分が小隊長になったときからの付き合いであるこの男は、アレクセイにとって最も信頼できる男だ。
アレクセイ自身も口に出していったことはないが・・・。
だからこうして、重要な任務を与えるのだ。

「では、シュバーン。これは極秘任務だ・・・」









・・・これはいったいどういうことなんだ?

帝都に戻ったフレンは、何の騒ぎも起こっていない帝都の状況に、内心首をかしげていた。
ラゴウ執政官が亡くなったとは、噂になっている。
しかし、それはどれも魔導器の暴走の事故によるもの・・・となっており、殺された・・・などとは言われていない。
下町の人間らは、ラゴウが勝手に魔導器の実験を行っていて、その爆発で死んだんだ。自業自得・・・と言っている。
最も騒いでいそうな評議会も穏やかなもので、平素の通りであった。
かけた議員はのちに補充される予定と聞く。
一方、騎士団のほうも奇妙なもので、提出した報告書について詳しい説明が求められることもなく、ただ、エステリーゼ様が旅をするのは危険であるから、それをお守りするように・・・とだけ命じられた。

「・・・わからないことだらけだ」

フレンはため息をついて空を見上げる。

・・・ユーリ、君は一体何をしているんだ?

前はいつも一緒だった。
お互いのことで知らないことなんかないくらいに、分かり合ってた。
ユーリが騎士団をやめてもそれは変わらない・・・そう思っていたのに。



・・・ユーリ、こんなに君を遠く感じたことはないよ。


フレンは苦悩に顔をゆがませた。
だが、そればかりではいられない。
ユーリを探すと出て行ったままのエステリーゼはまだ戻っていない。
彼女を守れというのが、今の自分への命だ。
いろいろと納得できないところがあるが、それはエステリーゼも同じはず。
ならば、彼女を守りながら自分なりに調べてみたらいい。

フレンは決意を新たにし、足を進める。
それが、再びユーリと自分をつなぐ道だと信じて・・・。
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