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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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「失礼する」

フードを目深にかぶった大男が発した低い声。
それだけで、男が誰であるのか悟ったシンクは、深々とため息をついた。


僕とレンティスだけでもここから逃げるのは厄介なのに・・・あんたまで首突っ込んでこないでよね。


シンクの心の声など知りもしないだろうが、面倒ごとを増やしてくれた相手を、睨みつけてやった。
一方、ルークのほうは入ってきた大男に目を向けて、首をかしげた。

あの体躯、あの声・・・


どっかできいたことがあるような・・・・・・



「あ」


ルークは思い出したといわんばかりに、ぽん、と手を叩くと嬉しそうに微笑んだ。



「ラルゴ」






その一言は、大男が踏み込んだせいで騒がしかったはずの室内に、妙に良く響いた。
しかし、その声を耳にして、一同が視線を集めたのは大男ではなく、その言葉を発した、一見してはただのマルクト兵である、ルークだ。

自分に注目が集まったのを目にしたルークが、異様な雰囲気に一歩ひく。

そのとき、イオンは信じられないとばかりに大きな目を見開いて、立ち上がった。

「あなたは・・・まさか・・・」




完全にばれた。
どうしようというように、ルークはシンクのほうに顔を向けるが、シンクは再び深々とため息をついて、モースに突きつけた刃はそのままに、軽く肩をすくめて見せるだけ。
動揺を露にするルークを見て、耐えられないとばかりに、大男が肩を震わせた。
大男はおもむろにフードを取り去ると、まだ笑いに細められた瞳でルークを見た。

「久しぶりだな、レンティス。また再び会えて何よりだ」
「ラルゴ・・・もういいよ、レンティス。そのあたまの、とっちゃって」

自分に集まる視線に戸惑いながらも、ルークはマルクト軍の冑を外した。
ふわりと、朱色の髪が舞い、窓から差し込んだ光をはじいた。

「久しぶり、ラルゴ。またあんたと会えて、俺も嬉しい」

そう言って、笑うその姿は、ここにいる誰もが長い間探してきた者の姿だった。
アッシュやイオンらは何か言いたげな視線で、ルークを見つめる。
しかし、シンクにとってはルークにいらぬちょっかいをかけるアッシュらは邪魔なことこの上ない。
不機嫌な様子を隠そうともせず、シンクはラルゴに声をかける。

「で、あんたはこんなとこまで何しに来たのさ」
「あぁ、忘れるところだった」

ラルゴは引きずっていた男を軽々と投げる。
投げられた男は綺麗な弧を描き、皆が囲んでいた円卓の中央に叩きつけられた。
男はつぶれたような声を上げ、弱弱しく何度も咳き込んだ。
イオンを庇うようにして立っていたアニスが、円卓の中央に落とされた男を見て、大声を上げた。

「あー!!イオン様、こいつモースの子飼いの奴ですよぉ」

その声に、モースの目が驚愕に染まる。
そして、その人物が誰であるのかを悟ったモースは、見る見る青くなった。
なぜならば、その男は自分がイオンがレプリカであると公表するために放った男であったからだ。
自分の計画が完全に阻止されたのを知り、モースは愕然とする。
そこへ、追い討ちをかけるように、ラルゴの声が降りかかった。

「モース。貴様が情報をまくよう依頼をしようとした暗闇の夢からの伝言だ」
「え・・・?」
「暗闇の夢だって!?」

驚くガイたちを尻目に、ラルゴは言葉を続ける。

「何をどれだけもらおうと、要求を受け入れることは、絶対にしない・・・だそうだ。頼む相手を間違ったな、モース。お前は墓穴を掘った。もう手遅れだ。」
「なに・・・?」
「窓の外を見てみろ」

窓の外、といわれ。一番窓際近くにいたルークが窓を開け、外をのぞいた。
すると、目にはいったのは大勢の人だかり。
ここまで聞こえてくる喧騒が、外で何が行われているのかを容易に伝えてくる。



『ユリアの預言には世界の滅亡が詠まれていた。それにもかかわらず、大詠師モースはそれを押し通そうとしたんだ!導師イオンは、それを阻み、世界を滅亡の道から外したんだ!その救世主たる導師イオンを、モースは害して、再び世界を滅亡の道に戻そうとしている!こんなことが許されていいと思うのかい!?』
『許されるわけがねぇ!』
『そうだ!』
『モースをこのままにしておけるか!』
『導師をお救いするんだ』



すさまじい人、喧騒。
それを聞き、モースは更に顔を青くしやがてがっくりと膝をついた。
イオンは、民衆の心を受け止め、静かに瞳を閉じた。
この騒ぎを鎮めるために、しばらくは忙しさに翻弄されるだろう。
しかし、民衆が自分たち自身で行動を起こし、未来を掴む様に向かっていっているのならば、これから先、大丈夫なような気がしていた。

やがて、瞳を開けたイオンは、ひた、とモースを見つめて口を開いた。

「モース、あなたたちの身を拘束させてもらいます。身の処遇は話し合いを行い、追って伝えます」
「連れて行きなさい」

ティアの声が響くと、部屋の入り口で待機していた神託の盾兵士がモースや円卓上に投げられたモースの側近を運び出していく。

モースへの報復を不完全なまま奪い取られてしまった、シンクは少し苛立たしげにモースを見送ったが、ルークが自分の横に立ったことを機に、肩の力を抜いた。

モースの件は一応かたがついたが、シンクやルークにとっての問題はここからだ。
問題が片付き、自分たちの存在がばれてしまった以上、次の追及の手は自分たちに伸びてくるだろう。
上手く逃げ出さなくては、この先、拘束され続ける可能性もある。なにせ、シンク、ラルゴ、ルークの三人はヴァンの策略に従い、多くの血を流した経験がある。世間的に見れば、立派な犯罪者である。
罪は罪ではあるが、そのためにおとなしく拘束される気など、シンクには毛頭ない。
シンクは、ルークとついでにラルゴにも視線をやり、すきあれば逃げるということを示唆する。
ルークもラルゴもそれを了承したと、わずかに頷くことで返した。

そして、イオンたちのほうに視線を戻すと、イオンが今まさに口を開こうとしているところだった・・・。
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年明け一発目に見てます(笑)
久しぶりに書き込みさせていただいてます。
やっとラルゴがパーティに戻ってきましたかww
シンルクだけも良いんですが・・・・・・やっぱりパパさん的ラルゴがいないと二人の暴走は止まりませんよね(かってなこと言ってすみません)
これからも更新楽しみにしてますねww
ナナギツ 2007/01/02(Tue)19:34:04 編集
Re:年明け一発目に見てます(笑)
書き込みありがとうございます。
あぁ、せっかく書き込んでいただいたのに、長らく放置&連載も放置で申し訳ないです。
連載は、私の独断と偏見を持った愛ゆえに、ラルゴを登場させました。
ラルゴはおとんですから(笑)
やっぱり、まだ10歳にも満たないお子様たちには、保護者が必要だと思いますし(ぇ)
多分、あともう少しで連載も終わるかと思いますので、お付き合い頂けたら嬉しいです。
【2007/01/09 00:13】
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