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TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。 出版元・製作元様方には一切関係ありません。 また、突然消失の可能性があります。 嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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BASARA2元親ストーリー、ネタバレを含みます。御注意を。




広く拓けた土地。
遠くからは男たちが争う怒声、金属音がきこえてくるが、ここにはただ強い風が吹き抜けるだけ。
邪魔するものは何もない。

隻眼に映るのは互いの姿のみ。
耳に聞こえるのは互いの息遣いと鼓動の音。
胸に宿るのは負けることへの恐怖や勝利のへの期待などではない。
ただこの時刻、この瞬間、この相手と相対することへの歓喜のみ。

既に呼吸は荒れ、服はところどころ裂け、体のいたるところからは血が流れ服に染みを作っている。
しかし、二人の隻眼は未だ光を失わず、その表情は歓喜に満ち溢れていた。

「はっ・・・どうだ、独眼竜。楽しんでるか?」
「of course.やっぱ、あんたとは気が合いそうだ」
「そりゃいい。俺もだ。・・・だが、いつまでも続けてるわけにゃいかねぇな」
「Ha!give upか?だがまぁ・・・そうだな。なら、次で終わりだ」
「おう」

にやりとお互いに哂う。

そして、炎のような赤い気が鬼を包み・・・
雷のような蒼い気が竜を包んだ。

空気がざわめき、ぴんと張り詰める。
それは、この一撃が全てを決するものになると伝えていた。

哂ったままの鬼と竜が動いたのは同時。
強大な質量の力がぶつかり合う。
激しい爆音を轟かせ、力は地面をえぐる。

土埃と風でふさがれた視界が晴れた時・・・
まだ鬼と竜はそこにいた。
表情に哂いを刻んだまま。

やがて揺らいだのは竜の体。

「・・・あんたの勝ちだ。西海の鬼」

どっ、と倒れた竜を見、鬼は碇槍を地面に突き立て、それに体を預けた。
鬼とて無傷なわけではない。
かろうじて立ってはいるが、すぐにでも倒れこんでしまいたいのは鬼とて同じことだった。

「・・・引き分けって感じもするがな」
「Ha!・・・それでも、先に倒れたのは俺だ。何でも好きなもんくれてやる」
「そうかよ」

碇槍を地面から引き抜き、鬼が竜の元へと近づく。
竜は自分のすぐ横に鬼がやってきたのを感じ、決意を胸に瞳を閉じた。

悔しいが、この鬼になら、首を持っていかれても仕方はないと感じた。

だが、待てども自分に襲いくるはずの衝撃は来ない。
その代わりにやってきたのは、自分の腰から愛刀が抜かれる感覚と、楽しげな鬼の声。

「竜の爪・・・もらっていくぜ」
「・・・Aah?」

開いた目に映ったのは、愉しげに引き抜いたばかりの爪を日に透かして見る鬼の姿。
鬼の碇槍を受け止めて、おそらくあちこち刃こぼれしているはずのものを、何をそんなに愉しそうに見つめるのか。
呆れの混じった視線で見つめていたのが伝わったのか、今度は鬼が不思議そうに竜を見つめた。

「なんだ?爪はやれねぇなんて言うなよ」
「・・・好きにしろって言ったんだ。んなこたぁ、言わねぇよ」
「じゃぁ何だ」
「本当にそんなもんもって帰る気か?西海の鬼が・・・」
「名高い独眼竜の爪だ。鬼の宝としちゃぁお似合いだろ?それによぅ・・・四国の鬼の懐にゃ、奥州は広すぎてはいらねぇよ。そうなったら土地は荒れる。荒れると判ってるもんをわざわざとって帰りゃしねぇさ。ここは竜の守る土地だからこそ栄えるってもんだ。・・・だろ?」

にやりと哂う鬼に、竜は目を奪われた。

確かに四国から奥州は遠すぎる。
奪ったとしても、良く治めることは困難だろう。
だが、誰もが天下を望むこの時世に、このようなことを平然と言う鬼がいるものか。
自治できなくとも、傘下に加えてしまえばよいものだ。
だが鬼はそれを望まない。
ただ、闘って鋭さをなくした爪のみを持ち、悠然と坂を下っていく。

抜き身の刀を持ち、歩む鬼の姿の何と美しきことか。

竜は半身を起こすと、その様子を目に焼き付けようとするように見つめた。
そして、やがて哂う。
その竜の様子に、右目と謳われる男が声をかけた。

「政宗様・・・」
「Crazyな野郎だ。だが・・・上等だ。そう思わねぇか?小十郎」
「・・・・・・」

むっつりと黙り込む右目に、竜は愉しげに哂う。
そして、痛む体を抑えてゆっくりと立ち上がった。

鬼の船も出航の準備がある。すぐに出航はしないだろう。
せっかくの気の合うものが見つかったのだ。
このまま帰してしまうのは惜しい。
鬼が船を出す前に文を書き、宴にでも誘うかと竜は思い、また哂った。







あとがきは続きでどぞ


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