TOAに関する妄想文だったり、日記だったりを書いていきます。ネタバレ有り。いわゆる"女性向け"の文章表現多々。
出版元・製作元様方には一切関係ありません。
また、突然消失の可能性があります。
嫌いな方は他のところに逃げてくださいね。
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TOVの作品目録・・・放置してたのをなおしました。
また、孤高の断罪者を設定変更・追加修正しましたので、読み直したいというかたがいらっしゃいましたら、作品目録をご利用ください。
・・・適度に目録も追加していく・・・つもり
また、孤高の断罪者を設定変更・追加修正しましたので、読み直したいというかたがいらっしゃいましたら、作品目録をご利用ください。
・・・適度に目録も追加していく・・・つもり
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結局ユーリに用意されたのは黒い鎧。
ジュディスよりはやや軽装ではあるが、騎士のような装いだ。
しかし、主に仕え剣・盾となる騎士と違い、黒の鎧は闇を歩む自分にふさわしい。
ジュディスとベリウスが満足そうに笑うのをよそに、ユーリは自嘲する。
こうして、ドラゴンに乗った白騎士と黒騎士は各地を飛び回ることとなった。
「黒騎士?」
竜使いと呼ばれる存在が魔導器を壊していたという噂とともに、それに黒衣の騎士が加わり、ともに行動している・・・という話が聞かれるようになった。
その噂はユーリを探して旅を続けるフレン・エステルたちの耳にも入ってきた。
「あの時、魔導器を壊していったのは竜使いというもので間違いありません。それに、黒衣の騎士が加わり、最近は二人で行動している・・・ということのようです。」
「まさか・・・それが?」
「ええ、ユーリである可能性があると思います」
そう話すフレンに、エステルも頷く。
彼らの中では、その黒騎士を追うことに決定したようだ。
しかし、相手はドラゴンに乗って世界を飛び回る竜使い。
それを地上からどう追うというのだろうか・・・
その様子を数歩離れた所から見ていたレイブンはこっそりとため息をついた。
あの時、アレクセイから言い渡されたのは極秘任務・・・という名の子守り。
よくいえば王族警護とその監視・・・だが、どうにもそうとは思えない。
とりあえず、あてもなく竜使いのうわさを頼りにそれを追いまわるのは勘弁願いたい。
口を出すのはためらわれるが、これを言わないと自分の身が危険だ。
意を決して、レイブンは口を開いた。
「竜使い追うってったって、どうするのよ。向こうはドラゴンよ?徒歩と船でどうやって追うのよ。おっさんくたくた~」
「じゃ、おっさんはここにいたら?・・・って言いたいところだけど、まっとうな意見ね。空と地上じゃ追うにしても限界があるわ。おまけにすぐに逃げられる」
「そう・・・ですね。どうしたら・・・」
レイブンからの意見に、リタの意見。
竜使いを追いたい気持ちは大きいが、そのすべがない。
エステルはギュッと手を握りしめうつむく。
「家でもわかればいいんだけど・・・」
ポツリ、とそう呟いたのはカロル。
何気ない一言だったが、フレンははっと顔をあげた。
「家・・・拠点にしている町がわかれば・・・」
「で、でも・・・点々としてるかもしれないよ」
確かに、一つのところにいるかは分からない。
だが、場所を絞ることはできるのではないか・・・
フレンは地図を指し示し、一つ一つ確認するかのように話し始めた。
「帝都・・・は警備上潜伏は無理。同理由でアスピオもでしょう。
ノール港・トリム港は先日騒ぎを起こしたばかりで避けるでしょうし・・・」
順々に指示しながら、フレンの手が一つのところで止まった。
「ヘリオード・・・拠点ではないでしょうが・・・ユーリが黒騎士であればここに姿を現すかもしれません」
「どうしてそう思うんです?」
首をかしげるエステルに、フレンは言葉を詰まらせる。
あまり・・・彼女に聞かせたい内容ではないのだ。
だが、口にしないわけにはいかない。
「この都市は帝国が開発を進めている都市なのですが・・・とある人物によって、私物化されつつあるのです。」
「都市を・・・私物化?誰がそんなこと・・・」
「キュモールです。執政官代行として赴任してますが・・・最近の彼のやり方は目に余るものがあります。しかし・・・」
「貴族でだから手が出せないって?」
「・・・そのようです」
クズね・・・とリタが吐き捨てる。
その通りだ、とフレンは思う。
いくら公平な世を目指しても、高い障害が目の前に立ちふさがる。
その壁に爪を立てるばかりで壊すことも乗り越えることもできない・・・それが今の自分なのだ。
だが、ユーリは違う。
「本当に、ラゴウを裁いたユーリなら、この事態を見過ごすことはしないでしょう。次に彼が狙うとしたら・・・ここに来るはずです」
そう言ってフレンはぐっと唇をかみしめる。
ユーリであってほしくない。
だが、そう思う心と、こんなことをやりきるのはユーリしかいないと思う心とがせめぎ合う。
でが、いかないわけにはいかない。
私的に人を裁くなんてあってはならないのだ。
今度こそ、君を止めてみせるよ。
そう決意を決めたフレンを、レイブンはじっと見てやがて身をひるがえした。
子守りを押し付けた相手に、このことを知らせておかねばなるまい。
その表情はどこか面白がっているように見えた。
ジュディスよりはやや軽装ではあるが、騎士のような装いだ。
しかし、主に仕え剣・盾となる騎士と違い、黒の鎧は闇を歩む自分にふさわしい。
ジュディスとベリウスが満足そうに笑うのをよそに、ユーリは自嘲する。
こうして、ドラゴンに乗った白騎士と黒騎士は各地を飛び回ることとなった。
「黒騎士?」
竜使いと呼ばれる存在が魔導器を壊していたという噂とともに、それに黒衣の騎士が加わり、ともに行動している・・・という話が聞かれるようになった。
その噂はユーリを探して旅を続けるフレン・エステルたちの耳にも入ってきた。
「あの時、魔導器を壊していったのは竜使いというもので間違いありません。それに、黒衣の騎士が加わり、最近は二人で行動している・・・ということのようです。」
「まさか・・・それが?」
「ええ、ユーリである可能性があると思います」
そう話すフレンに、エステルも頷く。
彼らの中では、その黒騎士を追うことに決定したようだ。
しかし、相手はドラゴンに乗って世界を飛び回る竜使い。
それを地上からどう追うというのだろうか・・・
その様子を数歩離れた所から見ていたレイブンはこっそりとため息をついた。
あの時、アレクセイから言い渡されたのは極秘任務・・・という名の子守り。
よくいえば王族警護とその監視・・・だが、どうにもそうとは思えない。
とりあえず、あてもなく竜使いのうわさを頼りにそれを追いまわるのは勘弁願いたい。
口を出すのはためらわれるが、これを言わないと自分の身が危険だ。
意を決して、レイブンは口を開いた。
「竜使い追うってったって、どうするのよ。向こうはドラゴンよ?徒歩と船でどうやって追うのよ。おっさんくたくた~」
「じゃ、おっさんはここにいたら?・・・って言いたいところだけど、まっとうな意見ね。空と地上じゃ追うにしても限界があるわ。おまけにすぐに逃げられる」
「そう・・・ですね。どうしたら・・・」
レイブンからの意見に、リタの意見。
竜使いを追いたい気持ちは大きいが、そのすべがない。
エステルはギュッと手を握りしめうつむく。
「家でもわかればいいんだけど・・・」
ポツリ、とそう呟いたのはカロル。
何気ない一言だったが、フレンははっと顔をあげた。
「家・・・拠点にしている町がわかれば・・・」
「で、でも・・・点々としてるかもしれないよ」
確かに、一つのところにいるかは分からない。
だが、場所を絞ることはできるのではないか・・・
フレンは地図を指し示し、一つ一つ確認するかのように話し始めた。
「帝都・・・は警備上潜伏は無理。同理由でアスピオもでしょう。
ノール港・トリム港は先日騒ぎを起こしたばかりで避けるでしょうし・・・」
順々に指示しながら、フレンの手が一つのところで止まった。
「ヘリオード・・・拠点ではないでしょうが・・・ユーリが黒騎士であればここに姿を現すかもしれません」
「どうしてそう思うんです?」
首をかしげるエステルに、フレンは言葉を詰まらせる。
あまり・・・彼女に聞かせたい内容ではないのだ。
だが、口にしないわけにはいかない。
「この都市は帝国が開発を進めている都市なのですが・・・とある人物によって、私物化されつつあるのです。」
「都市を・・・私物化?誰がそんなこと・・・」
「キュモールです。執政官代行として赴任してますが・・・最近の彼のやり方は目に余るものがあります。しかし・・・」
「貴族でだから手が出せないって?」
「・・・そのようです」
クズね・・・とリタが吐き捨てる。
その通りだ、とフレンは思う。
いくら公平な世を目指しても、高い障害が目の前に立ちふさがる。
その壁に爪を立てるばかりで壊すことも乗り越えることもできない・・・それが今の自分なのだ。
だが、ユーリは違う。
「本当に、ラゴウを裁いたユーリなら、この事態を見過ごすことはしないでしょう。次に彼が狙うとしたら・・・ここに来るはずです」
そう言ってフレンはぐっと唇をかみしめる。
ユーリであってほしくない。
だが、そう思う心と、こんなことをやりきるのはユーリしかいないと思う心とがせめぎ合う。
でが、いかないわけにはいかない。
私的に人を裁くなんてあってはならないのだ。
今度こそ、君を止めてみせるよ。
そう決意を決めたフレンを、レイブンはじっと見てやがて身をひるがえした。
子守りを押し付けた相手に、このことを知らせておかねばなるまい。
その表情はどこか面白がっているように見えた。
盗まれた水道魔導器をもったやつらが、ここに逃げ込んでいるかも・・・という情報を得てやってきたが、そこにいたのは紅の絆傭兵団ではなく、魔狩りの剣のメンバー。
そして、奥に進んでいった先に見たのは、探し求めた魔導器ではなく、もっと別のもの。
「うわぁ!!これ・・・魔物!?こんなおっきいの見たことないよ!!」
おびえて後ろに下がるカロル。
その前に進み出たフレンは、その存在を冷静に眺めた。
「あれは・・・?」
「あれはあの魔物を封じ込めるために使われてる封印魔導器ね。あのこはアイツを捕まえるためだけに使われてる。ちょっとやそっとじゃびくともしないわ」
「では、あの魔導器がある限り、あの魔物が暴れることはないんですね」
「たぶんね」
ひとまず、ほっとした一同だったが、暴れないからと言ってここに長くいたいものではない。
出口のほうまで逃げているカロルが、声をかける。
「みんな・・・早く帰ろうよ~。」
「そうですね。ここには下町の魔導器はなさそうですし。エステリーゼ様、戻りましょう」
フレンがエステルを促して外へ出ようとしたとき、急に足が止まった。
いや、止めざるを得なかった。
突然あふれ出したエアル。
とてつもない濃い濃度のそれはかよわき人間という存在を蝕むには十分すぎる量だった。
なすすべもなく、その場に膝をつく。
上を見ると、魔導器に詳しくないものでも一目見たらその異常さがわかるだろう、怪しい光を放つ魔導器の姿。
「なによ・・・あの子・・・過剰にエアルを放出してる・・・?とめないと・・・」
リタが魔導器のほうへ向かおうとするが、思うように動くことができない。
閉じ込められている魔物も、暴れだし、地面が揺れる。
エアルにむしばまれてこのまま目覚めなくなるのが先か
魔導器を破壊した魔物に殺されるのが先か
せめて・・・エステリーゼ様だけでも・・・っ!!
そん時、頭上を通り抜けたのは突風。
何が起こったかわからぬ者らに降り注ぐ魔導器のかけら。
異常なエアルからは解放されたが、依然濃いエアルが漂い、体は思うように動かず。
反面、自由を取り戻した魔物が起こす地響き。
背に冷たい汗が流れる。
あの魔物に挑んで勝てる見込みなどない。
だが、魔物の興味はフレンたちには一切向けられず。
その瞳はまっすぐ上を見つめていた。
その視線の先を追うと、いつからいたのか。
光が差し込むその先にす、と立つ一人の人間。
黒い髪、黒い服、逆光で顔は見えないが、まとう雰囲気は異質。
「人のあふれ返る世で、使命を果たすのは大変そうだな、グシオス」
グシオス?
誰に話しかけているのか。
戸惑うフレンをよそに、会話のような投げかけは続く。
「・・・まぁな。久々の世界を見て回ってたとこだ。・・・ん?あぁ、礼にはおよばねぇよ。俺が勝手にやったことだ。・・・あとは・・・そうだな。これもついでだ」
ふわりと、やわらかな風が頬をなでる。
心地よいそれに思わず瞳を閉じ・・・開いたときにはあれほど濃かったエアルは消え、残ったのは清浄とも思える空気。
「てめぇ!!何でこんなとこに居やがる!」
静寂を破るようにひびきわたった声。
ちょうどフレンたちがいる方とは反対側。
そこに、魔狩りの剣の面々がいた。
敵意をあらわに今にも飛びかかりそうな勢いのティソンに、黒衣の青年は軽く手を挙げる。
「よぉ」
「今日こそ決着付けやがれぇ!!!」
「今はそういう気分じゃねぇんだよ」
「てめぇの事情なんか知るかぁっ!」
「俺もお前の事情なんかしらねぇよ・・・っと」
とびかかってきたティソンをひらりとよけ、その腹に蹴りを入れる。
まるで人形のように飛ばされていくティソンをちらりと見やり、青年は身を翻し夜の闇に溶けた。
それが初めての出会い
そして、奥に進んでいった先に見たのは、探し求めた魔導器ではなく、もっと別のもの。
「うわぁ!!これ・・・魔物!?こんなおっきいの見たことないよ!!」
おびえて後ろに下がるカロル。
その前に進み出たフレンは、その存在を冷静に眺めた。
「あれは・・・?」
「あれはあの魔物を封じ込めるために使われてる封印魔導器ね。あのこはアイツを捕まえるためだけに使われてる。ちょっとやそっとじゃびくともしないわ」
「では、あの魔導器がある限り、あの魔物が暴れることはないんですね」
「たぶんね」
ひとまず、ほっとした一同だったが、暴れないからと言ってここに長くいたいものではない。
出口のほうまで逃げているカロルが、声をかける。
「みんな・・・早く帰ろうよ~。」
「そうですね。ここには下町の魔導器はなさそうですし。エステリーゼ様、戻りましょう」
フレンがエステルを促して外へ出ようとしたとき、急に足が止まった。
いや、止めざるを得なかった。
突然あふれ出したエアル。
とてつもない濃い濃度のそれはかよわき人間という存在を蝕むには十分すぎる量だった。
なすすべもなく、その場に膝をつく。
上を見ると、魔導器に詳しくないものでも一目見たらその異常さがわかるだろう、怪しい光を放つ魔導器の姿。
「なによ・・・あの子・・・過剰にエアルを放出してる・・・?とめないと・・・」
リタが魔導器のほうへ向かおうとするが、思うように動くことができない。
閉じ込められている魔物も、暴れだし、地面が揺れる。
エアルにむしばまれてこのまま目覚めなくなるのが先か
魔導器を破壊した魔物に殺されるのが先か
せめて・・・エステリーゼ様だけでも・・・っ!!
そん時、頭上を通り抜けたのは突風。
何が起こったかわからぬ者らに降り注ぐ魔導器のかけら。
異常なエアルからは解放されたが、依然濃いエアルが漂い、体は思うように動かず。
反面、自由を取り戻した魔物が起こす地響き。
背に冷たい汗が流れる。
あの魔物に挑んで勝てる見込みなどない。
だが、魔物の興味はフレンたちには一切向けられず。
その瞳はまっすぐ上を見つめていた。
その視線の先を追うと、いつからいたのか。
光が差し込むその先にす、と立つ一人の人間。
黒い髪、黒い服、逆光で顔は見えないが、まとう雰囲気は異質。
「人のあふれ返る世で、使命を果たすのは大変そうだな、グシオス」
グシオス?
誰に話しかけているのか。
戸惑うフレンをよそに、会話のような投げかけは続く。
「・・・まぁな。久々の世界を見て回ってたとこだ。・・・ん?あぁ、礼にはおよばねぇよ。俺が勝手にやったことだ。・・・あとは・・・そうだな。これもついでだ」
ふわりと、やわらかな風が頬をなでる。
心地よいそれに思わず瞳を閉じ・・・開いたときにはあれほど濃かったエアルは消え、残ったのは清浄とも思える空気。
「てめぇ!!何でこんなとこに居やがる!」
静寂を破るようにひびきわたった声。
ちょうどフレンたちがいる方とは反対側。
そこに、魔狩りの剣の面々がいた。
敵意をあらわに今にも飛びかかりそうな勢いのティソンに、黒衣の青年は軽く手を挙げる。
「よぉ」
「今日こそ決着付けやがれぇ!!!」
「今はそういう気分じゃねぇんだよ」
「てめぇの事情なんか知るかぁっ!」
「俺もお前の事情なんかしらねぇよ・・・っと」
とびかかってきたティソンをひらりとよけ、その腹に蹴りを入れる。
まるで人形のように飛ばされていくティソンをちらりと見やり、青年は身を翻し夜の闇に溶けた。
それが初めての出会い
探していた赤毛の人は、ぐったりとしたまま立ち寄った帝都の下町で見つかった。
なんでも、水道魔導器のなかにおちてきて、びしょびしょになったところを保護されたんだとか。
ユーリたちが下町を訪れた時には、赤い髪をひょこよこ揺らし、不器用ながら下町の仕事を手伝っているところだった。
お世話になったからと丁寧にお辞儀をして挨拶をする赤毛の青年に、ユーリは素直に好感を覚えた。
赤毛の青年・・・ルークは大きな目をきょろきょろとさせながら物珍しそうに周りを見て歩く。
そのせいで、遅れそうになってはあわてて走ってくる、ということを繰り返していた。
「なぁ、ジェイド。あれ何?」
「残念ながら、この世界のことは私にもわかりかねます」
「全く?」
「確証のないことは言いたくありませんので」
「・・・それって、予測はつくけど言いたくないってことだろ?・・・けち」
「何か言いましたか」
「・・・・・・なんでもない」
にっこりと威圧を込めた笑顔でいわれると、ルークに勝ち目はない。
それでも、興味は抑えられないのかふらふらと落ち着きなく歩いている。
「・・・あれは結界魔導器。この世界では一番重宝されてる。魔物が近寄れなくなるからな」
ユーリが上ばかり見て歩くルークにそう教えてやると、ルークは大きなめをきょとんとさせ、次の瞬間には嬉しそうに笑った。
「ありがと。」
「いーや。たいしたことじゃねぇよ」
「・・・他にも聞いてもいい?」
「答えられることならな」
「ん・・・と。あれは?」
そうして始まった、ユーリ式授業。
それを見たエステルが自慢の知識でルークに教えようとするものの、エステルの本で得た知識は何の基礎知識もないルークにとってはちんぷんかんぷんで、困ったようにユーリを見るから、結局ユーリが噛み砕いた知識をルークに教えることになる。
「ゆーりって、お兄さんみたいだ」
そう言って笑うルークを見て、エステルが悔しそうにユーリばかりずるいと言ったのは当の本人たちには聞こえなかった。
なんでも、水道魔導器のなかにおちてきて、びしょびしょになったところを保護されたんだとか。
ユーリたちが下町を訪れた時には、赤い髪をひょこよこ揺らし、不器用ながら下町の仕事を手伝っているところだった。
お世話になったからと丁寧にお辞儀をして挨拶をする赤毛の青年に、ユーリは素直に好感を覚えた。
赤毛の青年・・・ルークは大きな目をきょろきょろとさせながら物珍しそうに周りを見て歩く。
そのせいで、遅れそうになってはあわてて走ってくる、ということを繰り返していた。
「なぁ、ジェイド。あれ何?」
「残念ながら、この世界のことは私にもわかりかねます」
「全く?」
「確証のないことは言いたくありませんので」
「・・・それって、予測はつくけど言いたくないってことだろ?・・・けち」
「何か言いましたか」
「・・・・・・なんでもない」
にっこりと威圧を込めた笑顔でいわれると、ルークに勝ち目はない。
それでも、興味は抑えられないのかふらふらと落ち着きなく歩いている。
「・・・あれは結界魔導器。この世界では一番重宝されてる。魔物が近寄れなくなるからな」
ユーリが上ばかり見て歩くルークにそう教えてやると、ルークは大きなめをきょとんとさせ、次の瞬間には嬉しそうに笑った。
「ありがと。」
「いーや。たいしたことじゃねぇよ」
「・・・他にも聞いてもいい?」
「答えられることならな」
「ん・・・と。あれは?」
そうして始まった、ユーリ式授業。
それを見たエステルが自慢の知識でルークに教えようとするものの、エステルの本で得た知識は何の基礎知識もないルークにとってはちんぷんかんぷんで、困ったようにユーリを見るから、結局ユーリが噛み砕いた知識をルークに教えることになる。
「ゆーりって、お兄さんみたいだ」
そう言って笑うルークを見て、エステルが悔しそうにユーリばかりずるいと言ったのは当の本人たちには聞こえなかった。
振り下ろされる前足。
薙ぎ払われる尾。
それらを間一髪で避ける三人だが、それらの衝撃を受けて崩れてくる洞窟の瓦礫からまでは身を守れない。
一つ一つはたいしたことはなくとも、無数に振ってくる石つぶてをうけ、時折振ってくる巨大な岩石に気を張っていなければならず、三人の疲労度はたまっていく。
『もう終わりか?』
「んなわけねぇだろうが!やっとだ!やっと熱くなってきたんだからなぁ!!」
「・・・貴様を倒すまでは終わらん」
「てめぇこそ、動きが鈍いんじゃねぇのか?」
『それだけ咆えられれば上等だ』
しかし、言葉とは裏腹に人である三人の息は荒く、武器は欠け、疲労の色は濃い。
だが、その瞳の闘志は揺らいでいない。
ユーリはそれを見て笑う。
彼もこのひと時を楽しんでいるのだ。
ザギが力をためて跳躍し、斬りかかる。
それにユーリの尾が容赦なく振るわれ、ザギの体に直撃する。
しかし、ザギとてただでやられるわけではな。
相手の力を利用して、その尾に刃を立てる。
素晴らしい強度を誇る鱗を貫くことはできず、崩れ去るのはザギの獲物のほう。
だが好機。
同じところめがけて、ティソンの衝撃波が龍となって襲い掛かり
クリントの巨剣が振り下ろされる。
すさまじいまでの衝撃が洞窟内に響き、砂埃がもうもうとたちあがる。
それがおさまったとき見えたのは、壁に叩きつけられたザギ
地面に大の字で倒れるティソン
巨剣にすがるように膝を突くクリント
さも、面白いといわんばかりに瞳を輝かすユーリの姿。
人である3人の完全なる敗北の図・・・。
しかし、ユーリは愉悦を含む声音で3人に声をかけた。
『合格だ』
「・・・あ?」
「・・・何だと?」
『言葉のとおりさ。俺の体に傷入れた奴らなんか、久しぶりだ』
3人が見ているか、などお構いなしに、ユーリは自分の尻尾をひらひらと振ってみせる。
その尻尾の鱗のひとつに、小さくひびが入っていた。
絶大な強度を誇る黒竜の鱗に人がひびを入れる。
そのことが、ユーリに大きな満足感をもたらした。
退屈な日々を過していたユーリにとって、久々の充足感。
ユーリは自らの爪で器用に割れた鱗をはがすと欠片を三人の前に落とす。
『まだやる気があるんなら、今度相手にしてやるよ』
そういうと、ユーリは翼をはためかせる。
3人のために魔術で帰り道を作ってやってから、自分は空に向かって大きく開いた穴から外へ旅立つ。
久々の空はユーリが閉じ込められる前と変わらず、美しかった。
薙ぎ払われる尾。
それらを間一髪で避ける三人だが、それらの衝撃を受けて崩れてくる洞窟の瓦礫からまでは身を守れない。
一つ一つはたいしたことはなくとも、無数に振ってくる石つぶてをうけ、時折振ってくる巨大な岩石に気を張っていなければならず、三人の疲労度はたまっていく。
『もう終わりか?』
「んなわけねぇだろうが!やっとだ!やっと熱くなってきたんだからなぁ!!」
「・・・貴様を倒すまでは終わらん」
「てめぇこそ、動きが鈍いんじゃねぇのか?」
『それだけ咆えられれば上等だ』
しかし、言葉とは裏腹に人である三人の息は荒く、武器は欠け、疲労の色は濃い。
だが、その瞳の闘志は揺らいでいない。
ユーリはそれを見て笑う。
彼もこのひと時を楽しんでいるのだ。
ザギが力をためて跳躍し、斬りかかる。
それにユーリの尾が容赦なく振るわれ、ザギの体に直撃する。
しかし、ザギとてただでやられるわけではな。
相手の力を利用して、その尾に刃を立てる。
素晴らしい強度を誇る鱗を貫くことはできず、崩れ去るのはザギの獲物のほう。
だが好機。
同じところめがけて、ティソンの衝撃波が龍となって襲い掛かり
クリントの巨剣が振り下ろされる。
すさまじいまでの衝撃が洞窟内に響き、砂埃がもうもうとたちあがる。
それがおさまったとき見えたのは、壁に叩きつけられたザギ
地面に大の字で倒れるティソン
巨剣にすがるように膝を突くクリント
さも、面白いといわんばかりに瞳を輝かすユーリの姿。
人である3人の完全なる敗北の図・・・。
しかし、ユーリは愉悦を含む声音で3人に声をかけた。
『合格だ』
「・・・あ?」
「・・・何だと?」
『言葉のとおりさ。俺の体に傷入れた奴らなんか、久しぶりだ』
3人が見ているか、などお構いなしに、ユーリは自分の尻尾をひらひらと振ってみせる。
その尻尾の鱗のひとつに、小さくひびが入っていた。
絶大な強度を誇る黒竜の鱗に人がひびを入れる。
そのことが、ユーリに大きな満足感をもたらした。
退屈な日々を過していたユーリにとって、久々の充足感。
ユーリは自らの爪で器用に割れた鱗をはがすと欠片を三人の前に落とす。
『まだやる気があるんなら、今度相手にしてやるよ』
そういうと、ユーリは翼をはためかせる。
3人のために魔術で帰り道を作ってやってから、自分は空に向かって大きく開いた穴から外へ旅立つ。
久々の空はユーリが閉じ込められる前と変わらず、美しかった。